きょうのコラム「時鐘」 2010年2月18日

 いろんな親孝行があるものだ。奥能登の「もっそう祭り」で高校生が、亡くなった父親を見習って約5合のご飯を食べ切り、仏前に「全部食べました」と報告したという

祭りで生まれた親子の一体感である。隠し田でコメを作り、農民が年に1度腹いっぱい食べる民俗行事「もっそう祭り」の心を見たように思った。同じ場所に集まり同じものを食べ、集落の人々や肉親が一体感を強めるのである

「もっそう祭り」と似た行事は福井県の越前市にもあり「物相飯」と書き、山盛りのご飯とゴボウを集落で食べる。能登の「あえのこと」でも、田の神様と農民が同じ部屋で同じ食事をする形態が皇室の新嘗祭(にいなめさい)と同じ形だと指摘されている

一緒に食事をして心を通わせる重要さを民俗行事は教えてくれる。子育ては親子一緒の食事が大事である。外交でも国賓を迎えた際に晩餐会をする。政治家が料亭に集まるのも似たようなものか。企業の接待も商談成立へ連帯感を生む儀式の一つと見る向きもある

同僚と一杯飲むのも同じだろう。女房孝行に反するのは心苦しいが、それで、ついつい帰りが遅くなる。