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Webビジネス2010年2月17日 09:00

中国のおぞましい真相を明らかにする Google

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Google は1月12日、12月に発生した中国国内のサーバーハッキング攻撃に加え、中国政府によって行われた「ウェブにおける言論の自由をさらに規制する試み」を受け、「Google.cn が閉鎖を余儀なくされる可能性が高く」、Google の中国撤退も十分考えられることを発表した

しかし、失敗に終わったうえ、Google だけが標的になったわけでもないと Google が明かすハッキングの試みで同社が中国からの撤退を強く匂わすのはなぜだろうか? また、Google の中国参入以前から存在していた中国政府による検閲に突然懸念を示したのはなぜなのだろうか?

これが意外で不可解に思えるのは、中国政府による報復から同国にいる自社の社員とパートナーを守り、さらに自社が中国でビジネスを継続できる余地を多少残しておくべく Google がたぶん一部の情報を伏せ、遠回しな表現を使っているのが理由だろう。

Google ははっきりした真相を明かせないだろうし、明かさないだろうから、筆者がそれを明らかにしよう。インターネット関連企業として中国でビジネスを展開するには、人権侵害を犯す中国共産党への協力圧力のリスクがある。

筆者は誇張しているのではなく、事実を述べているのだ。国連の世界人権宣言第19条には、すべて人は「あらゆる手段により情報及び思想を求め、受け、および伝える」自由を有するとある。このような自由は、法律上も実際上も国際的に認められた人の権利である。

そのため、中国政府と仲良くすべく Google が自社に検閲をかけたとき、同社は国連世界人権宣言第19条侵害で同国政府と協力しているとの批判を浴びた。

ただし、Google の偉いところは、今では自社の中国に対するスタンスを完全に見直したことだ。同社は、「われわれは、Google.cn の検索結果に検閲をかけることをこれ以上継続しないことに決定したため、可能性があるならば法の範囲内で規制のない検索エンジンの運用基準について数週間以内に中国政府と意見交換していく」と述べている。

● 中国の問題

中国では、極右と極左組織間で内戦(国共内戦)が22年間続いた後、中国共産党が国民党を台湾へ追いやって現行政府を設立した。3,600万人が殺された「大躍進政策」や少なくとも2,000万が殺された「文化大革命」など、社会・経済実験を実行していった中国共産党は、ついに勝利の方程式を見いだした。政府が管理する自由貿易と保守的な共産党独裁主義の組み合わせである。

資本主義体制下における民主主義の富を実現しつつ、同時に説明責任、公正な選挙、そして政府の政策に関する開かれた議論を回避することの2つを両立させるのがその目標だ。

これら2つの価値観は、Google がやろうとしているように外国企業が中国の一般市民に情報サービスを提供しようとすると激しく対立する。

キューバ、北朝鮮、あるいはミャンマーといった 「普通の」独裁国家ならば解決策は簡単だ。Google などの外国企業各社の営業を禁止すればよい。しかし、世界中に自国製品を販売したいと考えている中国は、その見返りに外国企業が中国国民に商品やサービスを販売することを許している。

そこに、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」と考える Google が現れた。同社のこの社是は、世界中の情報を規制し、さまざまな出来事については中国国民に当局が用意した見解以外は絶対に見せないようにしたいと考える(さらに、インターネットを使って民主主義、自由、あるいは人権を呼びかける人物を監視し、追跡し、捕まえる)中国共産党の目標と真っ向から対立する。

Google のような企業が自分たちの通常業務(インターネット検索結果、電子メールサービス、チャットなどの提供)を中国国内で行うと、情報を規制し、国民のやりとりを監視し、政府を公に非難する人々を独断的に留置する中国共産党の行動とすべて衝突する。有名な検索結果の1つが、「Tiananmen Square」(天安門広場)で Google の画像検索を行うと、1989年に武力鎮圧された抗議の写真が上位に表示されるが、中国国内で同じ検索を実行すると、笑顔の旅行者と観兵式が表示される。

これは何とかしなくてはいけない。Google のように中国国内でビジネスを展開する西欧のインターネット企業は、中国共産党の方が変わる、と無邪気に信じている。しかし、数年前に一部で感じられたノロノロした緩やかな改善は、今となっては2008年の北京オリンピックの準備段階で批判の声を封じる新たな手段の1つに過ぎなかったように思われる。それ以後、変化の速度は遅いままで、その方向が逆に向かってしまっている。

このような理由から、アムネスティ・インターナショナルヒューマン・ライツ・ウオッチ、そして国境なき記者団などの団体が Google の最近の抵抗をそろって熱心に支持したり、中国市民が Google の中国本社に匿名で花束やキャンドルを置いているのだ。

● 始まりに過ぎない

グローバリゼーションには課題が山積みだ。そのメリットは明確であり、即効性もある。しかし、中国政府をはじめ、だれにとっても好ましくない結末も常にある。

Google の行動は、中国政府の多くの虐待行為に対する国際社会による長い抵抗の始まりに過ぎない。Google のライバルである Yahoo はすでに、Google を支持する声明を出している。現在、中国共産党と協力して中国国内で営利活動を行う米国や西欧の企業各社にすべての目が向けられている。そして、これらの企業も中国政府の検閲を次第に危険に感じ始めているのだ。

もし中国が外国企業に対して自国民の人権侵害への協力を強制しているだけならば話は大きく違っていただろう。これらの企業は株主にとっての価値を最大限に高めるために存在しているのであって、独裁主義から世界を救うために存在しているのではない。しかし、中国政府は抑圧に加え、その権力を悪用して中国企業に利益をもたらし、外国企業を不利な立場に置いている。

つまり、諸外国は自国の倫理を売り渡して中国でビジネスを展開しているのに、中国共産党は同時に彼らが中国で成功を収めることを阻止しているのだ。欧州連合商業会議所の中国事務局は先ごろ、政府が保護貿易主義政策と、外国企業を犠牲にして中国企業を優位に立たせる法体制と知的財産権の選択的保護を採用していることから中国でのビジネス展開が徐々に難しくなりつつある、とする方針説明書を出した。

したがって、中国企業が Saab、Volvo、Hummer などの外国企業を吸収する見通しである一方、外国の投資家が買収したいと考える中国企業に投資できるのは株式の50%に規制されている。中国政府は、自国企業所有の知的財産に関しては侵害を厳しく取り締まる一方で、外国の製品が模倣され、海賊版が作られ、権利を盗まれてもほとんど罰しない。

これまでの20年間、中国国内でのビジネス展開の可能性は国際企業から見ると貪欲で無分別な行動を引き起こした。「ああ、市場のわずか1%でもシェアを取れたらなあ…」という感じである。しかし、Google が今気付いたように中国市場はだれもが信じた楽園ではないのだ。

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