ここから本文エリア プルサーマル、揺れる自治体2010年02月14日
東北電力女川原発3号機のプルサーマル計画で、原発が立地する石巻市、女川町と県の3自治体が計画を受け入れるかどうか選択を迫られている。経済産業省は住民説明会を開くなど「国策」への理解を求めているが、一昨年の連続火災などで強まった東北電力に対する住民の不信感は消えていない。今後の焦点は石巻市の動向と言えそうだ。(斎藤義浩、高成田享) 県内の市民団体「止めようプルサーマル!女川原発地元連絡会」の日下郁郎さんらが10日、石巻市議会の阿部仁州議長らに面会し、計画について市議会は慎重に検討するよう求めた。原発内での労災隠しや超過勤務を告発する文書が日下さんあてに届けられており、「こうした労働環境のまま計画を認めるのは危険だ」と日下さんは主張した。 3自治体は昨年9月、安全性に関する専門家の検討会議を設置した。しかし、石巻市は慎重派の専門家の考えも知りたいと、これとは別に「プルサーマル市民勉強会」をつくり、独自の「勉強」を続けてきた。 その勉強会は今月9日、亀山紘市長に意見をまとめて報告した。市内の各種団体から出ている委員からは「現在ある施設を有効利用するのであり、やむをえない」など計画の必要性に理解を示す意見と、高速増殖炉で燃やすはずのプルトニウムを通常の原発で燃やすことへの慎重論があった。賛否どちらかの方向性は出なかったことになる。 市長が残る民意の集約と考えているのが市議会の動向だ。市議会の各会派は17日までに意見をまとめ、総合防災対策特別委員会で議論することにしている。県や女川町に比べ、より慎重な石巻市の最後の「関門」が市議会の動向となった。 行政側は着々と動きを進めるが、住民の計画に対する信頼度は同じようなスピードで高まってきたとは言えない。 内閣府の原子力委員会と原子力安全委員会が出した「計画は妥当」との答申を踏まえ、経産省は今年1月、計画を許可し、女川町での住民説明会を主催した。説明会の会場で回収したアンケート結果から経産省は「地元住民の理解を深めるうえで一定の効果があった」との見解を示している。 3自治体も昨秋から、プルサーマルを考える基調講演会や対話フォーラムを地元で開いた。 しかし、女川町の共産党2町議の全戸アンケートでは「宮城県沖地震が予想されるなかで大丈夫か」「核燃料サイクルが確立されていない。使用済みのMOX燃料はどこへいくのか」「今の時点でも事故が多いのに大丈夫か」といった不安や心配の回答が多かった。 3自治体は了解するかどうかの判断時期をそろえるとしていたなかで、石巻市長は「3月上旬までに結論を出したい」と時期を明言した。 石巻市議会の慎重派には、08年10月から11月にかけて起きた3件の連続火災による住民の不信感がまだ消えていないことや、東北電力が09年6月に計画の導入時期の目標を「遅くとも15年度まで」として、これまでよりも5年間遅らせたことから、自治体の判断も遅れるのではないかとの見方があった。 しかし、経産省が今月初め、計画を受け入れた地元に最大30億円の交付金を出すことを明らかにしたことで、受け入れ時期も重要になった。7月末までに了解すれば満額受け取れるが、来年3月末だと25億円に。その後1年遅れるごとに5億円ずつ減らされるという仕組みだからだ。 「交付金は地元自治体の判断時期に影響を及ぼさない。最終的には女川町長と石巻市長の判断を踏まえて判断したい」と、村井嘉浩知事は交付金と距離を置くが、「どうせ国策に逆らえないのなら、満額もらったほうが地域の発展につながる」という本音も自治体の幹部からは聞こえる。 「科学の専門家から安全か危険か、まるで天動説と地動説のように正反対の考え方を聞いて、正直に言ってとまどっている」。石巻市の勉強会の委員たちが市長に報告したときに、口々に「とまどい」という言葉を出した。自治体の首長にもこうした思いがあるなかで、選択を迫る時計の針が進んでいる。 【プルサーマル】 使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムとウランの酸化物を混ぜた「MOX燃料」をふつうの原発で燃やす計画。女川3号機では計560体のウラン燃料のうち228体以下をMOX燃料に取り換えて運転する。MOX燃料の割合は「従来の原子炉設計や運転管理のやり方をそのまま適用しても安全性が保たれる」とした、内閣府の原子力安全委員会の判断に基づいて設定されており、全国のほとんどのプルサーマル計画がこの基準に沿っている。 ●女川原発プルサーマル計画の流れ
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