【ソウル=東岡徹、箱田哲也】岡田克也外相は11日、訪問中のソウルで韓国の柳明桓(ユ・ミョンファン)外交通商相と会談した。会談後の共同記者会見で岡田氏は、今年が韓国併合から100年に当たることについて「併合された側、痛みを覚える側の気持ちを決して忘れてはいけない」と述べた上で、未来志向の関係を目指す考えを強調した。
岡田氏は併合について「韓国の人々にとって、国を奪われ、民族の誇りを深く傷つけられたことだった」と表明。韓国政府内では岡田氏の発言を「(併合100年という)歴史的な意味を持つ今年にあたり、大きな意味を持つ」と評価する声が出ている。
岡田氏は会見で竹島や歴史教科書などの懸案について「日本には日本の考え方がある」としつつ、「これらの問題が日韓関係全体に悪影響を及ぼすことのないよう日韓両政府が努力していく必要がある」と強調。天皇陛下の訪韓は「諸般の事情を踏まえて、慎重に検討していきたい」と述べるにとどめた。
会談では、永住外国人の地方参政権について柳氏が実現に向けた期待を表明したが、岡田氏は「政府として現在検討中だ」と応じた。北朝鮮が求める平和協定交渉や国連安全保障理事会の制裁解除には、北朝鮮が6者協議に復帰し、非核化に向けた具体的な取り組みを進めることがまず必要との認識を確認。2004年から中断している日韓経済連携協定(EPA)の締結交渉については、早期交渉再開を目指す考えで一致した。
また、柳氏は日本にある朝鮮王朝時代の文化財について「韓国側の関心を伝えた」(韓国外交通商省)という。正式な返還要求はせずに暗に配慮を求めた格好だ。