築地市場:移転巡り都議会・民主党反対姿勢 知事と対決へ

2010年2月17日 11時26分

 築地市場(東京都中央区)を江東区豊洲地区に移転する都の計画に対し、都議会最大会派の民主党が反対姿勢を強めている。石原慎太郎知事は、2014年の移転に向けて用地取得費を新年度予算案に計上した。民主党は「築地での再整備を検討すべきだ」として否決も辞さない構えだ。市場移転問題を巡る知事と民主党の対決は、24日開会の定例議会でヤマ場を迎える。

 「震度2の揺れで屋根が落ちた」。都が新年度予算案を発表した1月22日。知事は会見で築地市場の老朽化ぶりを強調し、早期移転の必要性を訴えた。

 都は総額1575億円の中央卸売市場特別会計に豊洲地区の用地取得費1260億円を計上。「責任ある判断をしていただきたい」との知事の発言は、定例議会を控え民主党への「けん制」と受け止められた。

 「移転案にどう対抗するか」。民主党内での議論も熱を帯びつつある。「特別会計から用地取得費を削った修正案提出」などの戦略が浮上。民主単独では半数に及ばないが、移転反対の共産党などと組めば過半数に達する。民主党の若手都議は「移転の必要はないという多くの都民の声も追い風だ」と話す。

 一方、民主党にも「現在地再整備の青写真をどう示すのか」という課題がある。移転反対の仲卸業者などからは、現在地再整備の具体案を提示しようとする動きがある。しかし、現在地再整備は過去に工事途中で頓挫した経緯があり、市場の業者には移転を望む声もある。「党として現在地再整備の合意づくりにどう取り組むか」は展望が描けていない。

 民主党が移転反対を唱えたのは、前回都議選のマニフェスト。背景に都議選の勝利を政権交代への弾みにしたい党本部の意向があった。鳩山由紀夫代表は都議選の際の街頭演説で「移転はさせない」と明言。「移転に安易に賛成することは、官邸や党本部が認めてくれないだろう」と、ある民主都議は漏らす。「はじめに反対ありきで、どんな論戦を仕掛けるつもりなのか。民主党の出方を注視するしかない」と都庁幹部は話す。【市川明代】

 ◇ことば・築地市場移転問題

 施設の狭さや老朽化を解決するため、都は91年に現在地での再整備工事に着手。市場内の業者から「営業への障害になる」と反発が出て、工事を中断した。その後、市場移転へと方針を転換。01年には豊洲の東京ガス工場跡地に移転先を決めた。しかし、都の調査で移転予定地から環境基準の4万3000倍の高濃度のベンゼンなど有害物質が検出され、土壌汚染問題が浮上。移転を巡る議論が再燃した。都は586億円をかけて汚染除去する計画で、その有効性を確かめる実証実験を6月末に終える方針。

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