【取材日記】トヨタの教訓　「消費者と疎通を」

　トヨタ自動車は１９５０年、在庫過剰で危機を迎えた。 今回の大量リコール事態よりも大きな危機だった。 当時大株主だった豊田家は持ち株をあきらめて金融圏から融資を受ける。 創業者が社長から退き、トヨタは販売を担当する自販と車を製造する自工の２社に分離した。 販売を予測できずに車を製造した責任を金融債権団が問うたのだ。

その後、トヨタは韓国戦争（１９５０−１９５３）特需の影響を受けたほか、営業通の自販出身者が消費者の苦情を自工に伝え、売れる車を製造した。 当時は日産が技術でトヨタを上回っていた。 消費者は目に見えない技術よりも、ニーズに応えてくれるトヨタの車を買い始めた。 日産よりもエンジン出力は劣ったが、乗り心地のよいトヨタ車は６０年代序盤、日産を抜いてトップになった。

トヨタは８２年に一大転機を迎える。 豊田章男現社長の父の章一郎名誉会長が社長に就任し、創業者の宿願だった自販と自工の統合を成し遂げたのだ。 その後トヨタは躍進し、年産１０００万台で世界１位になるまでグローバル拡張期を謳歌した。

最近、トヨタのリコール問題が尋常でない。 品質神話が崩れている。 より大きな問題は、数年前から消費者の苦情が経営層に伝わっていないところにある。 これには、トヨタが９０年代に各種品質調査でトップを独占し、自工出身者がうぬぼれたことが一つの理由に挙げられる。 ８２年以降、自販出身の社長は奥田碩氏（現相談役）だけだ。 前任の渡辺捷昭社長（現副会長）時代は要職を自工出身者が掌握した。 渡辺氏はトヨタの生産方式をグローバル標準として海外生産を増やした。 自販出身者が「急激な生産拡大で品質低下が懸念される」という声を出したが、黙殺された。 ０５年に会社を離れた自販出身の稲葉良睨氏（昨年米国トヨタ販売社長に復帰）は０７年末、「トヨタにはブレーキが必要だ」と指摘した。 消費者の苦情を伝える販売通の意見に耳を傾けろという指摘だった。

現代・起亜（ヒョンデ・キア）自動車も０２年以降、急激に海外生産を増やした。 来年は海外生産規模が３００万台を超える見込みだ。 そのためか、０５年以降、現代・起亜車の役員人事の際、国内の営業出身者にあまり光が当たっていないようだ。 品質戦争の重要な点は、消費者の苦情が経営層に伝達される疎通にあるということを考えなければならない。

金泰ジン（キム・テジン）経済部門記者