ジャカルタ(CNN) 絶滅の危機にひんするスマトラトラの保護策として、一般人によるペットとしての養育をインドネシア政府が容認する方向で検討している。密猟を防ぎ、条件を満たした人物による飼育を認め、個体数の増加を見込んでいる。
スマトラトラは不法伐採、開墾地拡大などの環境破壊と密猟により、野生の個体数が激減し、絶滅の危機にある。現在、推定される野生の個体数は400頭ほどと見られている。
ペットとしてトラを飼育できるのは、10万ドル(約900万円)の保証金を支払い、基準を満たした広さの庭など場所が確保できる人物。インドネシアではこれまでに、絶滅の恐れがあるバリ島の固有種カンムリシロムクについて、同様にペット化を容認。保護策として一定の成果を上げているという。
森林保護局の責任者は、多くの実業家や政府高官の自宅には、トラの毛皮や剥製があると指摘。「ペット化の容認で密猟を減らせることができる。インドネシア国内外で多くの人々がトラをペットとして飼いたいと考えているが、トラの捕獲は違法であり、入手するには死んだ個体を買うしかない」と述べ、保護策として有効だと強調している。
しかし、トラは生後9カ月ほどで成獣と同程度の大きさに育ち、鋭い爪や牙が人間にとっては脅威となる。サファリ・パークでトラの飼育担当者は、ペット化の容認という方針を知り、「あぜんとした」と驚いている。
飼育担当者は「厳しい訓練を受けてトラを飼育している」と説明。トラの生態を理解した上で世話をしなければ、ほんの些細な行動の違いでも、最悪の結果になると懸念している。
また、世界自然保護基金(WWF)や自然保護活動に当たるNGOなどは、トラの「養育」が解決策ではないと指摘。あるべき保護の姿は、野生環境の中で種として存続させていくことだと強調している。