【社説】新世代の覇気を見せた金メダリスト、モ・テボム

 バンクーバー冬季五輪スピードスケート男子500メートルで、21歳のモ・テボム(韓国体育大)が金メダルを獲得した。まさに誰も予想していなかった勝利だ。モ・テボムは国際スケート連盟による同種目の世界ランキングで14位にとどまっており、優勝が決まった直後は、本人も信じられないような様子だった。韓国選手が太極旗(韓国国旗)を胸につけて冬季五輪に出場したのは、1948年のスイス・サンモリッツ大会が最初だが、今回の金メダルはそれ以来、スピードスケート種目では初めてのものとなった。しかし、モ・テボムは泣かなかった。奇跡のようにレースを制した直後、集まった記者たちに対して「泣きたくても涙が出ない」とさわやかな笑みを見せた。

 モ・テボムはスピードスケート代表チームの中で最も若い。優勝が決まった直後、「泰陵選手村(ソウル市蘆原区)でチーム全体の会見が行われたとき、僕に対しては一つも質問がなかった。そのため、“よし、やってやる”と思って燃えた。僕には誰も関心を示していなかったので、逆にプレッシャーなしに滑ることができた」と語る。自らのブログに「成功という釘を打つには執念という金づちが必要」と書いたように、その勝利の背後には長い忍耐と闘志があった。モ・テボムは骨盤のゆがみから来る腰痛に悩まされ続けたが、決して弱音を吐かなかった。スピードスケートが国技とされるオランダのファンが観客席をオレンジ色に染め、熱狂的な応援を行う前でも、圧倒されることはなかった。整氷作業中に整氷車が故障し、1時間半にわたりレースが中断したが、自らのコンディションを乱すどころか、2回目のレースではさらに見事な記録をたたき出した。

 スピードスケート500メートルは、陸上競技でいえば100メートルに相当する。瞬間的な爆発力を生み出すエネルギーが必要なため、体格の小さいアジアの選手には墓場のような種目だった。水泳自由形の朴泰桓(パク・テファン)、フィギュアスケートのキム・ヨナに続き、モ・テボムも、「不可能なことなどない」という事実を、今回スピードスケートを征服することによって、韓国の国民に証明した。また、朴泰桓とキム・ヨナが世界トップに立って見せたような、あの明るくて余裕があり、その一方で覇気に満ちた姿も、改めて国民に見せてくれた。

 韓国が以前からアジアのスポーツ大国と自らを誇りに思ってきたのは、ボクシングやレスリングなど「ハングリー精神」が必要とされる種目で、強い選手を多く輩出してきたからだ。その後、経済発展と共に国力も成長し、得意とするスポーツ種目も変わってきた。サッカーや野球などの球技だけでなく、これまで先進国だけのものと思われてきたゴルフ、水泳、フィギュアスケートでも世界のトップレベルに到達している。その先頭には、ただひ弱だと思われていた若い世代、新韓国人がいる。モ・テボムの堂々とした姿から、大韓民国の未来にも期待を持つことができる。

【ニュース特集】バンクーバーオリンピック

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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