きょうの社説 2010年2月17日

◎加賀友禅の洋装化 繊維産地一体で取り組みたい
 加賀友禅業界が県繊維協会と連携し、友禅の柄などを生かしたドレスやワンピース、ブ ラウスなどを共同開発することになった。金沢市が加賀友禅技術振興研究所を設立するなど友禅の需要拡大策が本格化するなかで、繊維協会も足並みをそろえ、製品開発の輪に加わるのは心強い。

 金沢城公園で秋に開催される「おしゃれメッセ“かなざわごのみ”」では、加賀友禅を アレンジしたドレスなどが発表され、来場者の関心を集めている。ショーの呼び物だけでなく、日常的なファッションとしての可能性も示しており、伝統工芸の枠を超え、「おしゃれ」の面からその可能性を追求していけば新たな魅力が引き出せるかもしれない。

 ジーンズやTシャツの一部に加賀友禅の柄をあしらう商品も登場してきた。歴史のなか で培われた伝統的な技法や特徴は幅広いジャンルで応用が可能だろう。繊維業界としても、石川独自の和装ブランドを生かすことで他の地域にはまねのできない製品開発の道が開ける。加賀友禅の洋装化は、和洋の業界を超え、繊維産地が一体で取り組む価値がある。

 加賀友禅の洋装は、県繊維協会の仲介で染色加工、縫製メーカーが取り組むことになっ た。購買層を40〜60代に設定し、友禅作家が描いた柄を取り入れ、ドレスやワンピースなどを試作する。昨年7月にできた加賀友禅技術振興研究所の新分野開拓事業の一環となる。

 着物柄のファッションは、ミシェル・オバマ米大統領夫人が京友禅柄のドレスを着用す るなど外国人の関心も高い。デザインなどを工夫すれば日本の若い女性にも受け入れられる可能性は十分にある。ファッション性を重視し、着たいと思うような魅力ある製品を市場に送り出してほしい。

 金沢市内では昨年10月、和服姿でそぞろ歩きを楽しむ「金澤きもの小町」に約110 0人が参加し、和装の潜在需要の高さをうかがわせた。研究所は新年度に加賀友禅のファンクラブも発足させる計画である。広がりをみせてきた和装振興策に友禅の洋装化をどのように連動させるか。相乗効果を引き出すアイデアも求められよう。

◎北海道教組捜索 「丸抱え」の構造にメスを
 民主党の小林千代美衆院議員(北海道5区)が、北海道教職員組合から違法な選挙資金 を受け取っていたとされる問題で、札幌地検が政治資金規正法違反(企業・団体献金の禁止)容疑で同教組本部を家宅捜索した。教職員が支払う組合費の一部を裏金にして、選挙資金として提供していた疑いが持たれている。

 教職員の選挙運動は公職選挙法と教育公務員特例法で禁じられているにもかかわらず、 実際にはほとんど守られていない。小林議員の選挙でも、教組が政治的に中立であるべき教職員を大量動員して選挙運動にあたらせ、裏金を活動資金に利用するなどして、事実上「丸抱え」で応援したのではないか。労働組合の選挙活動の実態、労組と政治家の癒着の構図にしっかりとメスを入れてほしい。

 教組による組織的な選挙運動が目につくのは、なにも北海道だけではない。文科省は国 政選挙のたびに「教職員等の選挙運動の禁止等について」と題した局長通知を全国に出さざるを得ないほど有名無実化している。2005年には、山梨県教職員組合の幹部らが民主党の輿石東参院議員会長への支援のために、教職員から集めた寄付金を政治資金収支報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反(虚偽記載)で罰金の略式命令を受けている。

 小林議員の選挙を巡っては、昨年の衆院選で陣営の選挙対策委員長代行を務めていた連 合北海道札幌地区連合会の前会長が公選法違反(買収約束、事前運動)で一審有罪となった。判決が確定すれば、札幌高検が小林氏の当選無効などを求める訴訟を札幌高裁に起こす見通しである。

 小林氏側は昨年の衆院選の費用として、北海道教組から計1600万円を受け取ってい たという。これが事実なら、政治資金規正法で禁じられた政治家個人への企業・団体献金にあたる疑いが濃い。組合費や組合員のカンパから裏金をつくり、選挙資金にあてる手口は、山梨県教組の政治資金規正法違反事件でも見られた。民主党に「政治とカネ」をめぐる新たな問題が浮上したといえる。