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シャープ65インチの液晶テレビ

2005年6月6日

 最近のニュースからちょっとコメントさせていただきます。


 まず、シャープの65インチ液晶の発売について。

 本日、6/6の日経産業新聞に出てましたね、「65型液晶「打倒プラズマ」」って。世界最大です。先日のSIDで展示されたサムスン電子の82インチ液晶は商品ではなく、「単なる見せ物」であって金をかけりゃあ誰でも出きるもんですが(ほんまか?)、65インチの商品化には量産技術が必要です。シャープの量産技術が世界一であるということを示したと言えます。町田社長は研究成果を示すだけの「見せしめ発表はやめろ」が口癖だそうで、技術者たちも渋いことをやってくれます。なぜ65インチかというと、三重県の亀山工場で第6世代(1.5x1.8m)の基板が使われており、それから無駄なくキチッと2枚とり出せる大きさが65インチだそうです。昨年、工場が稼働し始めて3ヶ月後の4月の段階ですでに歩留まりも八割を超えて、現在ではすばらしく高いと見え、価格も168万円とお買い得となっております。特に、同型の松下のプラズマの208万円と比べると圧倒的にコストパフォーマンスが高いです。

 民生用よりもむしろ業務用で確実に大きな市場があると思われますね。駅や空港の大型情報ディスプレイは、液晶なら焼き付きの問題も無くて、ますますプラズマから液晶にとって替わるでしょう。また、民生用の大型は、今後は液晶vsリアプロになっていくのは確実で、プラズマ勢は苦戦を強いられます。プラズマ勢は、より低価格化、ハイビジョンへの完全対応を進めていかないと結構早い時期に「えらいこと」になりますね。私の予想では5年以内。
 ちなみに、私自身は自宅では日立の37インチのプラズマを3年前に自腹で購入して使ってます。画質はブラウン管に比べるとまだまだですが、液晶に比べるとはるかに「自然」ですよね。液晶は特に地上波放送の画質が低くて、買ってから「見ていると頭痛がする」という理由で、人にあげちゃうという「松本さんのお母さん」の様な人もいるくらいで、テレビとしては未完成じゃないでしょうか。ただ、多くの人は画質にそれほどこだわらなかったり、鈍感で何も感じなかったりしますので、今後も液晶は売れるでしょう。

 有機ELの敵ながら、Made in Kameyamaの液晶には今は売れて欲しいですし、Made in Amagasakiのプラズマにもがんばって欲しいところです。日立にも気合いを入れてがんばって欲しいなあ。とにかく、消費者の皆さんには、製品がどこで生産されているかに、ぜひともこだわっていただきたいところです。それが結局国内の景気を良くすることにもつながり、皆さんの給料も上がるわけですからね。


 三重の次は青森の話。

 電子部品の製造を手がけるエーエムエスと言う会社が青森県にあって、そこが液晶バックライト用の2〜2.5インチの白色発光有機ELの生産を始めると発表しました。いくつかの新聞にこの記事は掲載されてますが、たとえば日経産業新聞では6月6日です。同社は岩手県の花巻市に有機ELの研究施設があり、そこの成果を生かして新会社「東北デバイス」を設立し、青森県の六ケ所村に工場を建設し、12月に操業を始め2008年に株式公開を目指すらしいです。

 城戸研究室では、92年ごろから有機ELで白色を出す研究を開始して、低分子系、高分子系などで多くの白色素子を開発してきました。そして、経済産業省・NEDOの「高効率有機デバイスプロジェクト」で、白色素子の特性を実用化レベルにまで引き上げることに最近成功し、量産プロセスも同プロジェクトで要素技術を開発し、昨年から山形県有機エレクトロニクス研究所を中心に進めているNEDO「有機のあかりプロジェクト」で、革新的量産プロセスを開発しているところです。そして今年、それらの最新技術を基にした新会社を立ち上げて、2007年から超高効率て、しかも低価格の白色有機ELパネルの量産を開始いたします。ということを、いろんな講演会や雑誌の取材で申し上げてきました。

 今回のエーエムエスの新会社「東北デバイス」は、私の進めている新会社とはまったく別物です。間違える人がいるようです。新聞記事中に、「2001年から城戸教授と共同で白色有機ELパネルを開発してきた」とありますが、これは間違いです。実際には、「2001年に城戸研究室で研修を受けた」だけですので、ずいぶん意味が違います。城戸研で研修を受けた会社は国内企業だけでも少なくとも50社はあります。ですから、私にとりましては、共同研究相手という認識は無く、研修を受けに来られた会社の一つです。それから、携帯電話の液晶バックライトに使うには、既存のLEDバックライトの置き換えになるわけで、効率、薄さ、価格の点で上回る必要があります。このような高性能低価格白色有機ELは、ただ、装置を買って、材料を買って作ればできるというものではなく、世界一の最高水準の材料技術と、デバイス技術と、量産技術を持ち合わせなければ、決してできるものであはありません。私は現在の「東北デバイス」さんの実力のほどを知りませんし、どのような量産装置で、どのような効率、寿命のパネルをいくらのコストで量産されるのか、事業プランももちろん知りません。ですから、この会社の将来性に関してもコメントできる立場にはありませんので、ベンチャーキャピタルや銀行など金融関係の方々には私の方に問い合わせに来られないようお願いいたします。また、マスコミの関係者の方々には、以後、東北デバイスさんと城戸研究室との関係をお間違えのないようにお願いいたします。少なくともエーエムエスの関係者に今回の件で苦情を言ったところ、「記者が間違って報道している」、とのことでしたから。

 どうぞ、よろしく。


城戸淳二


追伸
6月14日のフジサンケイビジネスアイのコラムに拙文が掲載される予定です。
ぜひ、ご購読ください。


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