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社説:消費税議論 説明してから始めよう

 菅直人財務相が、消費税引き上げを含む税制改正の本格的な議論を3月から始める意向を示した。菅氏が会長を務める政府税制調査会で、所得税、法人税に加え、消費税や環境税についても議論に入るという。

 これまでの菅氏の主張は、まず歳出面での無駄削減を徹底させ、消費税の議論は2011年以降に始める、というものだった。次期総選挙前の引き上げはない、との方針は従来通りのようだが、議論の開始に関する限り、大幅な前倒しといえる。

 日本の財政が危機的状況にあることは今さら繰り返すまでもない。国債の大量発行を受け、市場ではすでに返済不能の危険度を示す数値が上昇している。米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは、先月下旬に日本国債の格付け見通しを「引き下げ方向」に変更した。ギリシャの財政危機を契機に、市場の関心は今や国家の債務返済能力に集中しつつある。

 そんな中で、消費税の引き上げも含めた税の抜本見直しを議論することは当然といえよう。菅氏によれば、鳩山由紀夫首相も「議論は大いにいいんじゃないの」と支持しているそうだ。

 しかし、まず聞きたいのは鳩山首相の説明だ。民主党は昨夏の選挙戦で、特別会計を含む予算の組み替えと無駄遣いの根絶により、増税しなくとも恒久的な財源を捻出(ねんしゅつ)できる、としてきた。あの約束はどうなるのか。歳出見直し最優先の路線に変更はあるのか、ないのか。「議論は大いにいい」というが、議論だけすれば4年間は消費税を上げなくても本当に大丈夫なのか。

 もし、方針が変わったのだとすれば、理由の明確な説明が要る。「景気悪化で税収が予想以上に落ち込んだ」では、納得できない。

 次に聞きたいのは、誰をトップに、どのような体制で議論していくつもりか、という点だ。中長期的視点から、年金を含む社会保障制度全体とセットで検討すべきテーマであり、税調の域を超えている。無駄削減の努力も税の議論と並行し当然、続けなければならない。環境税の導入も議論するというのであれば、より総合的な体制、戦略が必要になってくる。

 菅氏と仙谷由人国家戦略担当相、枝野幸男行政刷新担当相、長妻昭厚生労働相らが議論の中心になると見られるが、連携は大丈夫か。国家戦略室を活用するのであれば、菅氏と仙谷氏の責任分担はどうなるのか。不協和音が露呈するようだと、市場にはマイナス効果だ。何よりも首相の指導力が問われる。

 意見調整できず、小沢一郎・民主党幹事長の「一声」にすがる、の繰り返しは見たくない。

毎日新聞 2010年2月16日 2時31分

 

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