野党転落で出番の減った自民党の重鎮たちが、テレビ中継のある国会審議に新たな活躍の場を求めている。執行部も重鎮を無視できず、質問順は「年功序列」の様相だ。
「派閥領袖(りょうしゅう)らが軒並み『質問させろ』と売り込んでくる。テレビ中継される日を指定してくるんだ」。党幹部は重鎮の処遇に頭を抱える。
与党時代は、当選回数順に大臣・副大臣や党の部会長などのポストを決めることが慣例だったが、野党転落でポストは激減。脚光を浴びることのできる数少ない場面が国会の予算審議というわけだ。
衆院予算委員会がテレビ中継された今月5、8日の2日間、自民党は10人が質問。このうち、当選8回以上のベテランは加藤紘一元幹事長(13回・70歳)、野田毅元自治相(13回・68歳)、伊吹文明元幹事長(9回・72歳)、町村信孝元官房長官(9回・65歳)、石破茂政調会長(8回・53歳)、金子一義元国交相(8回・67歳)の6人。質問時間も6人で7割を占めた。「次のテレビ中継日に質問に立つ確約をとった」という閣僚経験者もいるという。
ただ、重鎮の質問は憲法や外交、経済など自分の専門分野が目立ち、鳩山政権を揺るがす「政治とカネ」の追及はいま一つだ。12日の集中審議では与謝野馨元財務相(10回・71歳)が「政治とカネ」に食いついたが、あとは後藤田正純氏(40)ら当選4〜5回組が追及役に回った。
政策論争は重鎮で、若手は汚れ役ばかり――。若手からは「人気回復には世代交代が必要なのに、ベテランは『自分だけは別』と思っている」と、ぼやきが止まらない。(蔭西晴子)