1月9日の読売新聞大阪版のグルメ記事で、鯨料理の老舗料亭 「西玉水」 が紹介された。
「大阪発全国の味(3)はりはり鍋」
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/cooking/20100109-OYT8T00670.htm
この記事には、「西玉水は商業捕鯨を続けるノルウェーから鯨肉を独自に取り寄せている。」 とある。
西玉水のHPでは、はりはり鍋も含めて、鯨肉の種類も原産地も、一切表示していない。
http://www.nisitamamizu.com/
「ノルウェーから輸入した」 とも解釈できる記述に疑問を持ち、鯨肉の原産地について質問した。
読売新聞には、問い合わせ入力フォームで質問を送信してから、大阪の読者センターに電話をした。
日曜日は記者が不在ということで、数日後に再び電話をして、記者からの伝言を受け取った。
それは、「アイスランドが捕獲したイワシクジラを、ノルウェー経由で輸入した」 という不思議な説明。
(追記(2月4日):読売新聞からやっと、西玉水に確認したという連絡があった。
私の1回目の問い合わせ後は、「アイスランド産イワシクジラ」 という説明だったそうだが、
2回目の問い合わせ後は、「時期によって産地も種類も変わる」 という説明に変わった。
ただ、仲買人・納品業者がノルウェーから取り寄せたと言っていることは、確かなそうだ。
しかし、納品業者が産地などをはっきり言わないこともあるというのは、新たな問題点となった。
「アイスランド産ナガスクジラ」 と言わないのは、輸入ルートなど、何か隠したいのだろうか。
また、時期によって変わるということは、調査捕鯨副産物になる可能性もあるのかもしれない。
西玉水の説明では、調査捕鯨副産物かどうかも知らないそうで、由来の謎は深まるばかり。)
2008年にアイスランドとノルウェーからの鯨肉輸入が再開されたが、アイスランドはナガスクジラ肉を、
ノルウェーはミンククジラ肉を輸出したのであり、イワシクジラは含まれていないはずだ。
IWCの資料で、1985年以降のイワシクジラ捕獲数を確認してみよう。
調査捕鯨、モラトリアムへの異議申立による商業捕鯨、そして先住民生存捕鯨の捕獲リストは次の通り。
http://www.iwcoffice.org/conservation/table_permit.htm
http://www.iwcoffice.org/conservation/table_objection.htm
http://www.iwcoffice.org/conservation/table_aboriginal.htm
アイスランドがイワシクジラを捕獲したのは、1988年の調査捕鯨での10頭が最後である。
また、グルメ雑誌記事などには、「ナガスクジラ肉」 とあるが、これも 1989年の68頭が最後だ。
冷凍肉の保存期間は長いとはいっても、20年以上前の鯨肉を提供しているとは思えない。
ということで、「アイスランドが 2006年に捕獲したナガスクジラ」 の可能性が高いだろう。
鯨肉を積んだ飛行機は、アイスランド発ノルウェー経由だったそうで、そのため勘違いしているようだ。
また、種類がイワシクジラで正しいのであれば、日本の調査捕鯨副産物の可能性も高い。
イワシクジラの捕獲は、2004年以降は毎年約100頭と、安定供給されていると考えてもよいし。
ただ、グルメ記事では 「ニタリクジラ」 という記載もあるので、ここでも混乱してしまう。
調査捕鯨副産物であっても、時期によって入荷する鯨肉の種類が変わるということだろうか。
こういった新たな疑問点を読売新聞に伝えて、再度調査するように要望した。
「取材した記者から直接電話で説明させます」 と回答があったが、未だに電話はない。
(上記追記のように、2月4日までに連絡があった。)
そのうちにようやく西玉水から、「ノルウェーから独自に鯨肉を取り寄せ」 に関する回答があった。
以下に回答の要旨を示すが、店側が勘違いしていることは確実で、読売新聞も気づかなかったようだ。
「アイスランドはIWCを脱退しており、鯨肉を直接輸入できない。
ノルウェー市場を一度通すことで、正式に輸入可能となる。」
2002年にアイスランドはIWCに再加盟しているから、この認識からして間違いである。
日本も含めて捕鯨国は、ワシントン条約付属書の一部を留保しているので、相互に輸出入は原則可能だし。
加えてグルメ記事によると、アイスランドとノルウェーからの輸入再開前であっても、
「ノルウェー産ニタリクジラ」 などという説明をしていたようで、原産地不正表示と言われそうだ。
西玉水には問い合わせフォームで、この認識の間違いを指摘したうえで、
はりはり鍋に使っている鯨肉の種類とその由来について、納品業者に確認するように要望した。
「外食の原産地表示ガイドライン」 があるが、これは義務ではなく、自主的取り組みを求めるものだ。
http://www.maff.go.jp/j/soushoku/gaisyoku/gensanti_guide/index.html
ただ、消費者側のアクションとして、原産地について積極的に質問することも推奨されている。
様々なグルメ記事などで、間違った原産地が流布されているので、ここで改善してほしい。
また西玉水では、通販で 「鯨ハリハリセット」 を提供しており、こちらは不正表示にならないだろうか。
http://www.nisitamamizu.com/cgi-bin/nisitamamizu/siteup.cgi?category=1&page=1
生鮮食料品や加工食品では、原産地を表示する義務があり、違反すると処分される。
ただし 「食肉(鯨肉を除く)」 と 「水産動物(ほ乳類を除く)」 とあり、対象外かもしれない。
表示義務対象の解釈については、確認するために、農林水産省に問い合わせ中である。
(追記(2月8日):農林水産省から、鯨肉も原産地などの表示義務があるとの回答があった。
【鯨は生鮮食品品質表示基準の「水産物の海産哺乳動物類」となり名称と原産地の表示義務があります。】)
ということで、農林水産省の「消費者の部屋」に質問すると、消費者庁が担当、との回答だった。
そして消費者庁のHPを見たが、担当部署がわからないので、公益通報の窓口に相談した。
http://www.caa.go.jp/info/koueki/index.html
すると、「公益通報にはあたらない。今後の参考にしたい。」 という回答のみ。
消費者庁で扱う公益通報とは、西玉水の従業員や鯨肉納入業者が、内部告発をする場合を指すそうだ。
一般消費者はまず初めに、国民生活センターや消費生活センターに相談することになっているようだ。
ただし私は、西玉水を利用しておらず、原産地不正表示の被害者ではないので、相談する根拠がない。
行政のたらい回しに遭ったが、この原産地不正表示について、農林水産省に再度問い合わせている。
今回は 「食品表示110番」 に回したのかもしれないが、1週間経っても何も回答がない。
http://www.maff.go.jp/j/jas/kansi/110ban.html
つまり、都合の悪い質問は無視するということか。
捕鯨関係などの情報は新聞記者には伝えているが、一般国民は相手にしないという方針なのだ。
「鯨肉食は日本の伝統食文化」 と声高に叫ぶ人たちは、このような原産地表示をどう考えているのか。
真実を知らないまま、知ろうともしないまま、うやむやにするのが日本の伝統文化ということか。
反捕鯨団体に対する抗議活動には熱心だが、実際に食べている日本人のことは気にしないのだろうか。
「海の幸に感謝する会」 や、各地に設立された 「クジラ食文化を守る会」 などに聞いてみたいものだ。
追記(2月2日):
農林水産省の問い合わせフォームから再質問したところ、すぐに回答が来た。
再質問では通販商品の原産地表示について強調したためか、消費・安全局の担当部署からの回答だった。
関係する都道府県や他省庁と共に調査する可能性があるそうだ。
しばらく時間はかかるかもしれないが、やがて正しい原産地を表示するようになるだろう。
日本の伝統食文化を守っているはずの老舗なのだから、正しい情報を消費者に伝えてほしいものだ。
最近も、西玉水ではりはり鍋を食べたというブログ記事も出ているのだから。
追記(2月12日):
ようやく西玉水から、電話で直接説明があった。
納品業者とは100年近い古い付き合いだそうで、鯨肉の原産地を詳細に尋ねることはないとのことだ。
このように老舗料亭は、原産地表示を求める現代の消費者の動きを理解していないのだ。
やはり、うやむやにすることが、日本の伝統文化なのだろう。
ナガスクジラがアイスランド産だとは知らなかったので、輸入鯨肉はノルウェー産だと思い込んでいた。
その納品業者に対して、JAS法違反であることを連絡するように、西玉水には依頼した。
鯨肉の原産地は不明確であったが、それでも、ミンククジラ肉を使っていないことは確かなそうだ。
ということで、調査捕鯨でナガスクジラ・イワシクジラ・ニタリクジラを捕獲対象にするのは、
尾の身を使ったはりはり鍋などを食べたい人がいるからで、決して科学的調査が目的ではないのだ。
(最終チェック・修正日 2010年02月12日)
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コメント(13)
市販の鯨肉の3分の1は、近海のゴンドウとかイルカの肉と見られますが、表示はみな「クジラ」です。そもそも鯨肉の偽装表示は、上級のミンク肉に見せかける手段だったのですが、一昨年に太地産のゴンドウ肉から水銀=4〜6.39ppm(基準値の10倍)、PCB=0.66ppm(やや上)が検出されたことで偽装が常習化したらしいです。 それに南氷洋産の鯨肉にも問題がないわけではありません。以下はグリンピースのメンバー(A)が調査捕鯨の船員(B)と交わした会話の一部です。 (B)──あとクジラの病気ですね。これが意外と多くて、ガンなんかも結構発見されるんですよね。例えば肝臓ガンとかのクジラも。でも肉やらはそのまま処理して一般に売られるわけですよ。これも大問題だと思いますね。 (A)それはかなり頻繁に見られるものなのですか? (B)ほぼ毎日のように見ますね。胃潰瘍だったり、ガン細胞は結構多いです。たぶん鯨研さんはいっさい発表してないと思いますけど。(一部簡略化)
2010/2/11(木) 午前 8:55 [ kyokuyo32 ]
原産地表示を義務化しているJAS法ですが、実際には適正な表示の指導だけで終わり、「懲役又は罰金」という処分に至ることは少ないですね。
JAS法の罰則については、次の農林水産省の資料を参考にしてください。
http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/pdf/070926_siryou2.pdf
クジラの病気に関してですが、「このような病気が判明しているが、人畜共通感染症ではないので、食べても大丈夫」と、消費者が選択するために発表すべきですね。ブルセラ菌感染症も、ヒトには無害であれば、隠すことはないですし。
ただし公開すると、学校給食には向かない食材だと、反対運動が起きてしまうかもしれないので、黙っているのかもしれません。
2010/2/11(木) 午後 2:43 [ ドイツ語好きの化学者 ]
>市販の鯨肉の3分の1は、近海のゴンドウとかイルカの肉と見られますが、表示はみな「クジラ」です。
kyokuyo32さん、ソース提示も無しに嘘ばかり書かないでねw
イルカ肉が「イルカ肉」と表示して売られてる証拠はネット上では何百件も見付かりますね。そのほんの一例をソースとして提示します↓。
http://www.izumiya3.com/blog/photo/20090211_3.jpg
http://kentnk.blog.ocn.ne.jp/photos/foods/20080503iruka_shufu_no_mise_kumano.jpg
http://image.blog.livedoor.jp/goyacha2002/imgs/4/9/4910191b.JPG
http://s-dog.net/archives/20070128/IMG_0007.JPG
http://www6.shizuokanet.ne.jp/usr/mas_yos/cook03-2.jpg
2010/2/16(火) 午前 10:47 [ toripan1111 ]
まだまだあります♪
http://www5f.biglobe.ne.jp/~makkura/mkr/syasin/irukaniku2.jpg
http://img05.ti-da.net/usr/kuukuusea/200904051239001.jpg
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/ed/4f17ccc96a34f9d70fca74de4f4509b3.jpg
http://pds.exblog.jp/pds/1/200612/07/16/f0067816_1954412.jpg
http://image.blog.livedoor.jp/ikegamix/imgs/5/8/58f055c5.JPG
http://orz.fujiblog.jp/images/P1040244.JPG
http://chinmi.up.seesaa.net/image/shizuoka12.jpg
2010/2/16(火) 午前 10:50 [ toripan1111 ]
http://stat001.ameba.jp/user_images/20090718/18/doyo-kotoni/44/ae/p/t02200162_0525038710215608074.png
http://img01.ti-da.net/usr/ouchi/ひーとぅー.JPG
http://image.blog.livedoor.jp/e_syokutaku_blog/imgs/8/8/88c90b01.jpg
http://img01.carview.co.jp/carlife/images/UserDiary/7752924/P1s.jpg
http://www.seelisteneat.com/mt/archives/JT100008.jpg
http://lc-fire.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2009/03/17/p1010258.jpg
http://ttaas.img.jugem.jp/20090116_689457.jpg
2010/2/16(火) 午前 10:51 [ toripan1111 ]
http://semi.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_516/semi/080517.jpg
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/20041230175435.jpg
http://oyado.cocolog-wbs.com/free/images/NEC_0004.JPG
http://img01.carview.co.jp/carlife/images/UserDiary/7752924/P1m.jpg
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/49/cf98358f71cfb0186cc3a14f06337005.jpg
http://ttchopper.blog.ocn.ne.jp/leviathan/images/IMG_4693_thumb.jpg
http://stat001.ameba.jp/user_images/62/7c/10116773273_s.jpg
2010/2/16(火) 午前 10:52 [ toripan1111 ]
http://pds.exblog.jp/pds/1/200702/18/10/d0103110_16504764.jpg
http://images.bcphotoshare.com/storages/1154037/thumb180.jpg
http://blog.sutohpiano.com/images/TS370352.JPG
http://img05.ti-da.net/usr/kuukuusea/200904051239000.jpg
http://www5f.biglobe.ne.jp/~makkura/mkr/syasin/irukaniku1.jpg
http://pds.exblog.jp/pds/1/200512/20/73/e0056973_0204751.jpg
http://pds.exblog.jp/pds/1/200711/03/55/a0002055_12244913.jpg
http://www.junjitakasago.com/blog/%A4%A4%A4%EB%A4%AB.jpg
2010/2/16(火) 午前 10:53 [ toripan1111 ]
http://ryubun.net/photo/IMGP5919.jpg
http://lc-fire.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2009/08/24/090816_100701.jpg
http://www.kitamura.jp/photo/datsuryoku_hour/image/20050411/shizuoka3.jpg
http://pds.exblog.jp/pds/1/200711/03/55/a0002055_12234134.jpg
ハイ、以前同様の嘘を書いてた人が居たので探してみたら簡単に↑の写真群が検索に掛かりました。
捕鯨に関する議論では一体何故証拠も無しに嘘を吐くkyokuyo32氏の様な人物が多数跋扈してるのか?
2010/2/16(火) 午前 10:56 [ toripan1111 ]
それから同じくkyokuyo氏が書いてる、
>グリンピースのメンバー(A)が調査捕鯨の船員(B)と交わした会話の一部です。
の部分は、全く客観証拠が存在しないんですよね。
「売れ残ってるのにまだ獲ってる!!」
「南極海に肉を洋上投棄してる!!」
と非難する一方で、癌による病変部位の僅かな肉まで商品としてくまなく売ってる?アホかw
歩度5トンのクロミンク肉に何百kgもの病変部位なんか有る訳無いんだから、しかもそんなクジラは精々数%なんだから、見てくれが悪けりゃその部分は捨てるのがアタリマエ。
勿論試料としてサンプルした残りの話だけどね。
そも病変がある個体の、「別部位の肉」が人体に悪いなんて言ってたらほとんどの畜肉はアウトです。
ブログのコメント欄なら嘘撒き散らし放題だとでも思ってる?
2010/2/16(火) 午前 11:15 [ toripan1111 ]
toripan1111さんへ
ネチケットという考え方を再確認してください。
言論の自由は尊重しますが、個人ブログのコメント欄は掲示板ではありません。他人の自宅や、小さなカフェを訪れたと考えてください。
他の投稿も含めて、ご自身のブログなどで書いた反論・検証記事をトラックバックするようにしてください。
2010/2/16(火) 午後 7:38 [ ドイツ語好きの化学者 ]
ポスドク様。
あからさまな嘘・風説を指摘し、糺す事が「ネチケット」違反であるとすれば、ネット上では嘘を吐いて世論を誘導してもかまわないし、その事で何の落ち度も無い実業者の業務を妨害し、信用を毀損するのも野放し、という事になりますよ?
今日のケースで言えば「イルカ肉が鯨肉として売られている」という嘘を私が証拠を提示して「それは嘘である」と糺しただけ、です。
それを「ネチケット違反」で封じられたら「水銀値の高いイルカを鯨として偽装し売ってる」という風評でリアルに損害を被る人も出ますよ?
2010/2/16(火) 午後 8:37 [ toripan1111 ]
ネット上のブログ事で情報を書き/書かせる事は「自宅或いは小さなカフェ」で囁くのとは全く意味が違い、否が応にも情報を発信してしまう事ですよ?
「他人の自宅・小さなカフェ」での会話は不特定多数の人達の目には触れませんし、その会話に事実を歪めた嘘があっても実社会への影響は知れてます。
ですが、ココに書かれた嘘はこのブログを訪れる人達、今日、今の時間までですら247人(訪問者カウンター)が見て、信じ、それをネットを含めた色んな場所で広める可能性があります。
前々から思っていましたが、貴方達反捕鯨さん達はizaや産経報道の事実誤認は鬼の首でも獲ったかの様に騒ぎ立てるくせに、自分達の嘘に甘過ぎる。
2010/2/16(火) 午後 8:48 [ toripan1111 ]
捕鯨に関して、捕鯨反対の為ならどんな嘘でも撒き散らしてかまわない、と考えちゃう人達の代表格はkkneko氏ですが、↓の、あからさまに他者の信用を毀損する氏の嘘を見て、放置してよいと思いますか?
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?action=m&board=1834578&tid=a45a4a2a1aabdt7afa1aaja7dfldbja4c0a1aa&sid=1834578&mid=41391
何れにせよ、今後も嘘を見つける度に糺し続けますので。
2010/2/16(火) 午後 8:55 [ toripan1111 ]