毎日新聞記者が見た死の現場とは

【新刊】福岡賢正著、キム・ギョンイン訳『隠された風景』(カタツムリ)

 毎日新聞の現役記者である著者は、2000年9月から01年10月まで、同紙の文化面に掲載された「隠された風景」という連載記事を担当した。捨て犬を安楽死させる施設や、牛や豚を食肉として処理すると畜場など、わたしたちの周辺に長らく存在しながら、人目につかないよう隠されてきた現場を訪れ、そこで行われている実態を写実的に描写した。

 飼い主に捨てられたペットの行方を追い、著者は福岡県動物管理センターを訪問した。そして、そこで働く人々が、捨て犬を殺処分する鉄の箱を「ドリームボックス」と呼んでいることを知る。著者が取材した同センターの所長は、「“児童を追いかけ回す野良犬を捕まえて欲しい”という通報を受けて学校に行ってみると、教師らは開口一番、“子供たちの前では捕まえないで欲しい”と求めてきた。子供たちにありのままの現実を偽りなく教え、生命の尊さをきちんと理解させるのが教師らの役目ではないか」と反問した。現代人の食欲を満たすため、と畜場で大量に解体処理されるニワトリや牛、豚は、生まれたときから「生命」ではなく「製品」だった。

 著者は、「“死”から顔を背けず、正面から堂々と直視したとき、初めて輝く“生命”を発見できる。真に生命を尊重する心を持とう」と訴えている。240ページ、1万2000ウォン(約935円)。

キム・ギョンウン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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