【コラム】事大と事大主義
これに対して、「強い国に従う、主体性のない態度」を示す「事大主義」という用語が韓国の歴史に登場したのは、それほど昔ではない。植民地時代の末期、日本の学者らが「韓国の歴史は半島という性格のため、周辺国によって決定され、そのため強国に従うのが民族性になった」という学説を唱えた。それまで中国に従ったように、今後は日本に従うべきという主張は植民地観の中核を成している。
日本の韓半島(朝鮮半島)専門家、慶応大の小此木政夫教授は最近、「韓国が驚くべき発展を遂げた動力は事大主義にある」と主張した。加えて「事大主義は最近の言葉でいえば、グローバルスタンダードを目指す国家戦略」との見方を示した。中世の東アジアのグローバルスタンダードが中国だったため、中国に従ったが、現在はそれが米国のため、米国に従っているという指摘だ。同教授はグローバルスタンダードを指向するDNAを持つ韓国人と、そうではない日本人と比較した。
小此木教授は、これまで国家間の優劣を力関係で解釈してきた「事大」や「事大主義」に、文明の標準の受け入れという新たな角度でアプローチした。ある国家が国家間の外形的な格式にとらわれず、先進国との交流を通じて国家の利益を最大限確保しようとする実用主義を堅持してきたという主張は、歴史的にも合致する面がある。ただし「事大主義」は「事大」に変えなければならない。グローバルスタンダードを目指す国家戦略を意味する歴史用語は「事大」であり、一方「事大主義」は強国に対する従属的な態度を強要するために作り出された用語だからだ。
「事大」には、より高い文明に直面するたびにそれを積極的に受け入れながら、自国の主体性を失わないよう努力してきた韓民族の苦心が込められている。数千年の間、東アジアの標準だった中国文明に対するわが先祖たちの両極端な態度は、「三国史記」の著者金富軾(キム・ブシク)と「三国遺事」の著者一然(イル・ヨン)によく表れている。金富軾は固有の文明を捨て、先進的な中国文明を受け入れるべきと主張したのに対し、一然は固有の文明の重要性を強調した。歴史学者のキム・ヨンソプ延世大教授は、この対立は中国の文明(漢字)と固有の文明(ハングル)を統合しようとした世宗によって発展的に解消されたと説明している。朝鮮王朝がこの精神を基に打ち立てた対中国政策が「事大」だった。
韓国は、相変わらず大国に囲まれ、まだ先進国の仲間入りをしていないため、今後も小此木教授の指摘する「事大」が避けられないだろう。恥ずかしがる必要はなく、新たなものと古いものを調和させてきた先祖たちの知恵を見習わなければならない。
李先敏(イ・ソンミン)論説委員
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