ルポ:グアテマラ在留韓国人1万人を襲う「恐怖」(中)

 こうした犯行には、いつも内部の人間が関与していた。昨年1月の殺人事件は、工場の警備員らの仕業だということが判明したが、未成年者だという理由で釈放された。昨年3月の韓国人男女殺害事件では、家政婦がグアテマラ最大の暴力団組織「Mara18」に協力していた。この事件にはグアテマラの内務大臣が直接捜査に乗り出し、「スマイリー」という名で呼ばれる組織のボスを検挙した。もはや自分の身の回りにいる誰も信用できない状況というわけだ。

 駐グアテマラ韓国大使館のパク・ソンフン警察領事(警監=警部に相当)は、「状況はさらに深刻化している。最近、別の事件で検挙された誘拐犯らの手元から、韓国人の誘拐予定者リストが出てきた」と語った。リストには、誘拐予定者らの名前や勤務先の位置が詳しく書かれていた。既に誘拐対象者を物色し、事前調査まで済ませていたというわけだ。パク領事は、「韓国人はカネになる、という認識がどんどん広まれば、誘拐対象者がさらに増えるのは間違いない」と語った。

 実際、在留韓国人らも「最近、大使館を通さず家族が自ら金を出して誘拐事件を解決したケースでは、身代金が数十万ドル(数千万円)に上ったという話を聞いている。身代金が高くなるにつれ、誘拐事件がさらに増えそうで恐ろしい」と語った。

スーパーマーケットも武装警備=今月5日、南米グアテマラの首都グアテマラシティにある韓国系スーパーマーケットで警備に当たるガードマン。3人の警備員は、拳銃と防弾チョッキで武装している。このスーパーで買い物するには、五つもの鉄の門を通過しなければならない。/写真=趙儀俊特派員

虐殺される韓国人、13カ月で8人

 殺害されたソンさんは、先月18日午後6時30分ごろ、「警察の検問を受け、警官が同行していたのに誘拐された」と知人に電話をした。目撃者の話によると、警察のパトカーは、ソンさんの車が通過する10分前に現場に到着し、停車していた。ソンさん自身も、3カ月前から「何者かがわたしを尾行している」と不安げに語っていたという。

 誘拐犯との交渉過程でも、警察を通じ誘拐犯に情報が漏れることを想定し、逆情報工作も行った。だが最終的にソンさんは、今月2日に遺体で発見された。この事件に関しては、警察が誘拐した可能性もあるとみられている。2007年にグアテマラを訪問したエルサルバドルの国会議員も、警察官4人によって殺害され、この捜査を指揮した捜査局長は、海外に逃亡した。

 09年には、人口1300万人のグアテマラで6451人が殺害され、グアテマラシティは世界で最も危険な都市の一つだ。午後7時を過ぎると街角に人の姿はなく、50万ウォン(約3万8000円)もあれば請負殺人が可能だ。犯人はほとんど検挙されず、捕まえても判事が報復を恐れ、有罪宣告率は3%にとどまる。人を殺しても、保釈金さえ払えば釈放されるというわけだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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