ルポ:グアテマラ在留韓国人1万人を襲う「恐怖」(下)

ハンドバッグの中には常に拳銃と弾倉を携帯=グアテマラシティでスーパーマーケットを経営するキム・ミファさん(女性)は、ハンドバッグにいつも拳銃を入れて持ち歩いている。武装警備員を5人雇っているが、片時も気を抜くことはできないと話す。/写真=趙儀俊特派員
 こんな不毛の地にも、韓国人は根を下ろした。縫製業やアパレル業などに従事する1万人余りの在留韓国人が、現地で10万人以上を雇い、グアテマラの輸出の10%をまかなっている。韓国人がいなければ、グアテマラ経済は崩壊すると言っても過言ではない。

 韓国では「早くグアテマラを出ろ」と言う声も多いが、生活の基盤を一朝一夕に捨て去ることはできない。ある在留韓国人は、「金の出し入れが日常的に続いているため、夜逃げでもしない限り、急に出ていくことはできない」と語った。危険だとしても、在留韓国人にとっては、グアテマラが第2の故郷なのだ。そのため韓国人は、誘拐・強盗犯にとって魅力的なターゲットとなっている。08年には1件しかなかった在留韓国人の殺害事件が、経済危機が本格化した昨年は6人、今年1月には早くも二人(米国の市民権保有者含む)に達した。誘拐され、身代金を払って釈放されたケースも4件に上る。こうした中、「殺してやる」という脅迫電話は、今や日常茶飯事となった。

 グアテマラ内務省誘拐専門チームのエマヌエル・リベラ・チーム長は、「韓国人は魅力的な誘拐・強盗ターゲットだ。ここでは米国人よりも韓国人の方が金を持っていると考えられている」と語った。リベラ氏の前任者は08年、誘拐犯組織によって殺害された。

「韓国の警察を派遣してほしい」

 グアテマラシティのロデオ韓国スーパー。中に入るには、五つの鉄の門を通過しなければならない。どれも、中から客の様子を確認して、主人が門を開ける、という形になっている。キム・ミファ社長(女性)は、「スーパーマーケットの警備に当たる完全武装の警備員だけでも5人いる」と語った。

 ハンドバッグには常に拳銃を入れて持ち歩いており、家のあちこちにも銃を隠してある。キム社長は、「この建物は鉄板を重ねて銃弾が貫通しないようになっており、石壁ではなく、コンクリートで戦車のように頑丈に作られている。そのため、家の中では携帯電話がつながらないほど」と話し、さらに「最近は、とても怖くて血圧の薬を飲んでいる。家の外に出られないため、一日中ずっと部屋に閉じこもり、事実上、監獄暮らしをしている」と語った。

 縫製業を営むチャ・ボクユンさん(53)の事務室には、拳銃2丁と、映画で見るような散弾銃2丁が常備してある。チャンさんは机の上に銃を並べ、「こういう生活をしている」と語った。チャさんはボディガードも雇った。元ベテラン刑事で、ためらうことなく強盗に向かって引き金を引くことができる人物だ。そのため、月に1000ドル(約8万9000円)の給与を支払っている。国民一人当たりの国民所得が年平均約2500ドル(約22万3000円)のグアテマラでは、異例の金額だ。

 警察から家政婦まで、自分の周辺の誰も信用できない在留韓国人が唯一信じるのは、韓国大使館と銃だけだ。キム・ミファ社長は、「韓国の警察官が何人かでも、警察領事として来てくれればいいのだが。在留韓国人の企業を頻繁に巡回するだけでも、現地人の間でうわさになれば、強盗を減らすことができるだろう。在留韓国人は皆、自分で自分の身を守らなければならないということを知っている。それでも、祖国はわたしたちを見捨てていない、ということをもう少し示してほしい」と語った。

グアテマラシティ=趙儀俊(チョ・ウィジュン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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