【萬物相】日本にある「朝鮮王室文庫」の運命
1965年に韓国と日本が国交正常化条約(韓日基本条約)を締結する際、韓国国民の関心事の一つは、日帝時代に奪われた韓国の文化財をどれだけ取り戻せるか、ということだった。日本に持ち出された韓国の文化財は、韓国の文化財庁が把握しているだけでも6万1409点に上る。しかし、返還されたのは1321点に過ぎなかった。このとき、考古学者のキム・ウォンリュン博士は怒りを込めてこう語った。「いっそ保管費でも与えて、長期間きちんとしまっておけと(日本に)返してしまい、全世界に公表するのがよい」
陶磁器176件・434点、書籍163部・852冊、通信資料20点…。返還されたのは日本国有の物品に限定され、個人が所蔵する貴重な青磁・白磁・古書画などは、当初から対象外とされた。「通信資料」とは、日帝時代に郵便配達人が使用した帽子や草履などを指す。また、同じタイトルの本を分冊し、3倍に水増しした。
いずれにしても、この協定で韓日文化財返還問題は「解決」した、というのが両国政府の立場だ。ただし後ろ髪を引かれるのか、日本は協定文の末尾に「民間の所有物も返還するよう勧奨する」という一文を添え、「これにより、今後韓国に(民間所有の文化財を積んだ)宝船が送られることだろう」と大風呂敷を広げた。
当時、韓国政府が国交正常化と経済援助の必要性から文化財返還問題を拙速に処理したために、その後の返還要求の根拠を弱めることになったのは事実だ。しかし、国際法的には整理がついたとしても、道徳と良心の責任まで免除するものではない。協定当時も今も、日本は政府所蔵の韓国文化財に関する詳細を徹底して秘密にしてきた。
一昨日の韓日外務長官会談で韓国側は、宮内庁が所蔵していることが確認された朝鮮王室文庫の返還に言及した。すると日本側は、否定的な反応を示したという。日本は45年前の韓日文化財協定を持ち出して拒絶するだろう、という予測通りだった。問題は、民間の所有物も返還を勧奨するというのに、皇室が所有しているものすら返せないことをどう説明するのか、という点だ。韓国政府は、日本が返還するのであれば受け取るものの、返還の査定までする必要はない。数点返されれば、残る数万点の未帰還文化財に対する免罪符になるとも誤解されかねない。ともあれ、朝鮮「帝室図書」の印が押されている書物である限り、宮内庁に保管されてあろうと、皇室のものになることはない。
金泰翼(キム・テイク)論説委員
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