救急車に道を譲らない韓国のドライバー(下)

 アンケート調査に応じたソウル市内の消防官は「サイレンを鳴らし、パッシングしても動こうとしない車両のせいで焦りが募る気持ちは、経験者でないと分からないはずだ。救急車がサイレンを鳴らして接近してきたら、自分の家族が一刻を争う状況に陥ったという気持ちで率先して道を譲ってほしい」と訴えた。

 道を譲らない車両のせいで、救急車が事故に巻き込まれることもある。現場に急行する救急車が信号を無視しなければならない状況にあっても、それを気にも留めず、停止しない車のせいで事故が起きる。消防防災庁によると、救急車による交通事故の件数は、2005年は108件、06年は130件、07年は96件、08年には149件と、毎年100件を超えている。

「ネズミを捕まえて」と通報する女性 

 些細なことで119番通報をする人のせいで時間を奪われ、緊急時の出動に支障を来すケースも多い。1月28日午後11時32分、ソウル消防防災センターにとんでもない通報が入った。「家にネズミが1匹入ってきたので捕まえてほしい」という内容だった。電話の主は20代女性で、どうしても出動してほしいと頼むため、センター側は鍾路消防署に出動指令を出し、「憲法よりも無理が通る」という申し送りのコメントを付けた。出動するほどのことではないが、通報者が無理を言うので出動してほしいという意味だった。

 ネズミ1匹のために消防車を出動させた蓮建119安全センターのチョ・ヨンゴン消防尉(消防司令補に相当)は、「乳児を育てる20代後半の若い主婦が浴室の排水口にネズミが入ったと通報してきた。出動してから5分でネズミを棒でたたいて捕獲し帰ってきた。毎日こうした些細なことによる通報が2-3件あり、重要な出動に遅れることもある」と話した。

 アンケート調査でも、「酔っぱらいによる通報や動物救助などの通報で重要な緊急出動ができないケースがあったか」との問いに、「いつもそうだ」「しばしばある」と答えた消防官は43.6%(595人)に達した。また、虚偽やいたずらによる出動が10件中2-4件に達するとの回答も44.8%あった。

 朴演守(パク・ヨンス)消防防災庁長は、「救急車両に道を譲らないことは、他人の命を奪うに等しい行為と考えるべきだ。市民には、救急車は危篤患者用だという認識を常に持ってもらいたい」と訴えた。

金成謨(キム・ソンモ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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