北朝鮮デノミ:金英逸首相、人民班長らを前に謝罪(下)

外貨使用を再び許容、一般市場正常化の措置

 こうした措置について一部では「貨幣改革前に戻ったのも同じだ」という指摘も出ている。韓国の当局者も、「貨幣改革以後、住民の反発が高まって、北朝鮮内部が統制不可能になるほどの混乱に陥るや、当局の市場統制が緩んできているのは確かだ」と話した。「首相の謝罪」という異例の措置が必要なほど雰囲気が深刻だったというわけだ。

 金首相の謝罪以降、北朝鮮の両替商と違法外貨使用で逮捕された人のうち、外貨の出所が確認された場合は大半が釈放されたという。外貨使用禁止で事業が事実上中断した主要国家機関と国営企業所の外貨稼ぎ機関も中国との事業を再開し、中国に出向く人たちの数が目立って増加したとのことだ。当局の謝罪内容が伝えられると、住民の反感も落ち着きを取り戻し始めたという。

 元幹部の脱北者は、「金首相が各地域の人民を代表する人民班長に直接謝罪したのは人民に直接謝罪したのと同じで、“共和国の歴史”に残る大きな事件だ」と述べた。この脱北者は「これまで当局が、自分たちの過ちについて住民に謝罪したことは一度もなかった」と説明。また、「貨幣改革による不満が体制に抵抗する雰囲気に変わり、幹部階層まで広まるほど強かったため行われた措置だ」と指摘した。最近、黄海道では住民の集団的な反発の動きがあり、住民が外貨取り締まり要員を暴行する事件も起きたという。北朝鮮当局が貨幣改革の失敗を認めると、住民らの間では「奪った金を返せ」という声が上がっているという。北朝鮮当局は昨年末、旧貨幣100ウォンを新貨幣1ウォンに換える措置を取った。その後、新貨幣の価値は10分の1に落ちた。この過程で損害を受けた人たちが「当局に金を奪われたのも同じだ」として、補償を要求し始めた。北朝鮮の内部筋は「貨幣改革の失敗で当局が守勢に追いやられたのを見た住民の要求が、今後さらに強まることもあり得る」と語った。

姜哲煥(カン・チョルファン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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