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【社会】

「子どものため残りたい」きょう入管に出頭 不法残留15年のペルー人夫妻

2010年2月16日 朝刊

在留特別許可を求め16日に出頭するペルー人家族=愛知県豊橋市で

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 約15年間、不法残留を続ける愛知県豊橋市のペルー人夫妻が16日、在留特別許可を求め、名古屋入国管理局(名古屋市港区)に出頭する。日本で生まれ育った小学5年の長男(11)と、生まれつき障害のある次男(2つ)を抱え、「子どものために日本に残りたい」と訴える。

 妻(35)は1994年、夫(39)は95年、観光ビザで来日。滋賀県内の鋳造部品工場で知り合う。同居を始め、仕事の都合で豊橋へ。婚姻届を出せぬまま長男が生まれ、帰国の機を逸してきた。

 長男は小学校で日本人児童と机を並べ、サッカークラブに通う。「一番の友だちは日本人」と妻は目を細める。次男は先天異常のため歩いたり話したりできず、視野も狭い。血液検査や投薬が定期的に必要だが、不法残留で健康保険が受けられず、月5万円程度の医療費は自己負担。発作で何度も救急車で搬送された。

 生活は苦しく「自分が風邪でも病院に行かない」と妻。でも、帰国して治療を受けるのは不安がある。ペルー事情に詳しい南山大外国語学部の安原毅教授(ラテンアメリカ経済論)は「日本と比べ医療機関が少なく、医療費も高い。障害があっても庶民が適切な治療を受けるのは難しい」と指摘する。

 出頭のきっかけは、法務省が在留特別許可の指針を見直したこと。日本に10年以上滞在し、学校に通う実子を育てている▽日本での治療が必要か、必要な親族がいる−などの場合は在留特別許可を出す方向で検討するとされる。外国人支援を続ける「共の会」(名古屋市)が不法残留者に出頭を呼び掛けた。夫は「いつ入管が来るか、いつ仕事がなくなるか。ずっと不安だった」と振り返る。

 出頭しても強制退去の可能性もある。共の会が7日、豊橋市内の教会で開いた説明会で、不安げな夫妻に狩浦正義代表(63)は声を大にした。「長い間、日本で何も悪いことをせず、家族を守ってきたんだ。ちゃんと話せばいい」

 (社会部・赤川肇)

 

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