調査対象となった「レクサスES350」
いっぱいに踏み込んでフロアマットに引っかかったアクセルペダル=米運輸省高速道路交通安全局の報告書から
【ロサンゼルス=中川仁樹】トヨタ自動車の米国でのリコール問題に関連し、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が08年、同社の高級車ブランド「レクサス」を対象とする調査報告書をまとめていたことが分かった。回答したユーザーの1割が意図せずに加速する「暴走」を経験。NHTSAは、ずれてアクセルペダルを戻らなくする恐れのあるフロアマット以外に、車の構造的な問題も指摘している。
NHTSAによると、調査はユーザーの苦情を受け、07年モデルの「レクサスES350」を対象に実施。1986人のユーザーにアンケートし、600人が回答した。
報告書によると、回答者のうち59人が「意図しない加速を経験した」と答え、その中の35人は全天候型フロアマットを敷いていた。NHTSAは、ゴム製のフロアマットが前方にずれた場合、マットの「溝」にアクセルペダルが引っかかり、固定されてしまうと指摘した。
マット以外では、「暴走」するとブレーキを踏む力や停止までの距離が、それぞれ通常より約5倍に増すと指摘。また、高級車を中心に普及してきたエンジンの始動・停止ボタンの問題に言及。ボタンを3秒以上押し続ければ停止はするが、取り扱い説明書に記載されていなかった。
トヨタは調査を受け、報告書がまとまる前の07年、「レクサスES350」と「カムリ」の一部で、オプション販売の全天候型フロアマットを交換するリコールを実施した。しかし、今年8月、「レクサスES350」に乗った4人が、カリフォルニア州サンディエゴ郊外で全員死亡する事故が起きた。この車は、別のレクサス用のマットを敷いていた。
NHTSAによると、トヨタ車の同様のトラブル報告は、06年から102件あり、13件の事故が発生。17人がけが、5人が死亡している。
報告書について、トヨタは「調査も踏まえて07年にリコールを実施している」(広報担当)と話す。始動・停止ボタンやブレーキ系の仕組みは国によって大差はないが、同社は「マットの留め金を外したり、二重に敷いたりしなければ問題は発生しない」と、構造上の欠陥を否定した。