マクロ経済動向と資産運用形成 研究室

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help リーダーに追加 RSS 「ウォール街のランダムウォーカー」の提唱するインデックス・ファンド優位論

<<   作成日時 : 2010/02/15 21:01  

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■「ウォール街のランダムウォーカー」の提唱するインデックス・ファンド優位論
好著「ウォール街のランダムウォーカー」では、株式インデックス・ファンドの運用成績の方が、大多数のファンドマネジャーの運用成績よりも好成績であるということが説明されています(以下「ランダムウォーク運用理論」ということにします)。つまり、長期保有の分散投資ということであれば、仮にブラックマンデーのような暴落や、あるいはまた今回のような金融恐慌による暴落があったとしても、いずれ株価は回復して元値に戻ってくることから大きな損失も発生しないし、経済が引き続き成長軌道に乗れば、その果実を継続して享受できるため長期間平均すれば7.5%程度の資産成長が見込めるということになります。値下がりの中でやたらと動いて処分や売買を繰り返すとかえって損失が大きくなるから長期間腰を据えた運用をすべしというわけです。

結果から見ますと、NYダウにしましても、09年3月の底値から1年近くを経過した現段階で、暴落前の水準に近いところまで回復していますので、確かに放置しておいて問題はなかったということになります。

NYダウ終値(ヤフーファイナンスによる)
●2008.9.30 ・・・10850.66ドル
●2009.3.9  ・・・6547.05ドル(最安値)
●2010.2.12 ・・・10099.14ドル

■解決するべき課題と対応
しかしながら、今回のような金融恐慌による暴落の中で、保有しているインデックス・ファンドの値下がりを目の当たりにしながら耐え忍ぶというのは、上記の「ランダムウォーク運用理論」を理解していたとしても、ものすごい忍耐力が必要だと思います。

したがいまして、「ランダムウォーク運用理論」における解決するべき課題としては、株価が暴落した場合に心理的にどのように対処するかということになります。

一つの方法として、著者マルキール博士も提唱されているドルコスト平均投資で定額買いを継続していたと仮定すれば、今回確かに下落と回復の過程でむしろ含み益が発生していたことになりますし、さらにある程度の手持ち資金を確保した上で当室のような変則的ドルコスト平均投資でもって買い入れ回数を意図的に増加させていたとすれば、さらに含み益は増加したものと思われます。あるいはまた、アセット・アロケーションの理論通りに値下がりの大きい資産項目を買い増しする方法で毎月継続投資していた場合にも、含み益は大きくなったことでしょう。

これらの方法は、言ってみれば、毎月定額のナンピン買い対応ということです。

ただし、どこまで下がるが分からない恐怖感の中での継続投資となりますので、機械的な処理が必要となり、心理的な抵抗感はどうしても残ります。「まだまだ下がるのではないか?」という不安は底打ちが確認できるまでは、常に存在しますし、一度大きな下げ相場を経験してしまいますと、或る程度世界経済が落ち着きを見せ、経済成長路線回帰が予見できる現段階にあってもなお、たとえばギリシャやスペインなどの信用不安が台頭したり、中国の預金準備率引き上げによる景気減速不安が頭をもたげたりしますと、株価は一時的にしろたちまち下落してしまいます。

結構な投資残高を持っているが故に、その毀損に対する不安と恐怖感は、いくら強気の当室でも心のどこかに存在しています。

そうした投資家の不安心理を払拭してくれる指標は、最終的には分配金投資利回りとPBR、特に分配金投資利回りであると当室では考えています。分配金投資利回りが高ければ、基準価格が相応の底値ゾーンにある一つの証左となりますし、また多少の値下がり分は、時間の経過とともに分配金の稼得で埋め合わせが可能です。

それゆえに、当室の基本方針としては、「ランダムウォーク運用理論」による株式インデックス投資中心ではなくて、分配金利回り稼得目的の中長期分散投資(投資対象は株式とは限らない)中心という事柄に帰着せざるを得ないわけです。現状では、当室の場合はそれが高利回りのリート投信ということです。

■当室の資産構成(資産運用割合)
そうしたことから、当室の資産構成としては、次のように、リート投信を主体として高い利回りを確保しつつ、株式インデックス投信を補助的に組み込む形式の配分としています。
画像


「ウォール街のランダムウォーカー」(原著第9版)の中でマルキール博士が説明しているように、株式インデックス投資では、配当率2%、一株利益の期待成長率5.5%が合算されて投資資産が年平均7.5%ずつ増加する想定となっています。つまり、株式インデックス投資の資産増加想定割合の中に期待成長率部分が多かれ少なかれ、かなりの割合で含有されていることは間違いなく、それが「儲け」の主たる構成要素であり、かつまたそれは不確定要素がそれだけ存在するということと同義ですので、その点当室が重視している分配金利回りとは確実性の次元が違っています。すなわち、リート投信分配金利回りは毎月の実績から計算できてしまい確実性が高いと言えますが、株式インデックスファンドの期待成長率部分は想定期待値に過ぎないのでやや不確実だと言わざるを得ません。

しかし、この点はマルキール博士も考慮済みのようで、「私は誰もが金融資産のかなりの部分を不動産に振り向けるべきだと考えており、株式投資のある割合をREITを組み入れたインデックス・ファンドで持つことをお勧めする」とし、「確実な現金収入を重視する人は、現金払いの比較的多いREIT型不動産投信の組み入れ比率を高めればいい」と述べられています。

債券投資については、利回り的に高いものはありますが、その分だけ格付けが低くならざるを得ないため、リスクも高くなります。確かに、ハイイールド・ボンド投信で利回りが20%近く出ているものもあります。ただしその場合は、格付けが「B〜BB」のジャンク債への投資配分が多くなっています。そうでないと、高い利回りは望めません。仮に十分に分散投資されていたとしても、リートのような実物資産の裏付けが無いため、高利回りボンド投信への傾斜はやや不安の残るところです。高利回りのリート投信が存在する限りは、高利回りボンド投信へ資金を配分する理由はないと思います。

■バブル期の経験では証券利回りは20%が最高値
以前、20年前のバブル期に大量発行されて、その後に暴落した転換社債(CB)の利回りの経験話を書きました。その当時の私の記憶では、「ジャンクCB」の最高利回りは、20%弱まで上昇し、その後次第に沈静化したというものでしたので、やや根拠としては弱いながら、異常事態でのピーク利回りは20%が上限、というのが当室の経験則的想定です。

現状でのその当時の「ジャンクCB」に相当する高利回り商品というのが、当室が主力投資先として設定しているリート投信ということになります。このところの値下がりで、次の様にまたまた利回りがアップしています。15〜20%という利回りは、やや異常値に近い数値ですので、しばらくはこの状態が継続するとしても、いずれは分配金が減らされるか、あるいは基準価格が値上がりするかして、やがては利回り8%前後にまで戻って「正常化」されるものと思います。

●ラサール・グローバルREIT・・・基準価格 4434円、表面利回り 18.9%
●ダイワ・グローバルREIT ・・・基準価格 4087円、表面利回り 17.6%
●ワールド・リート・オープン ・・・基準価格 5008円、表面利回り 18.0%
●DIAMJ−REITオープン ・・・基準価格 5903円、表面利回り 16.3%
(いずれも毎月分配型。ヤフーファイナンスによる2月12日終値)

当室では、その戻りは、基準価格の値上がりによって戻るものと想定しています。なぜならば、もともとの発売基準価格は10000円ですので、その基準価格において利回り6〜8%が確保された商品であったはずですから、基準価格が4000円〜5000円台となっている現状での利回りが、10%を超えているのは特に不自然ではない、ということがひとつ。それから、ピーク時から概ね「半値八掛け二割引」という当室好みのことわざ通りに値下がりしていて、底値を這っている状態であることがもう一つの理由です。やがて基準価格は2倍程度には回復するものと思います。

債券と違ってリートの場合は、裏付けとなる実物資産がありますので、立地条件等の運用条件が良好な物件に十分分散して投資してあれば、格付けはそれほど関係なく安定的と判断できます。仮に空室率が高くなるとしても、もともとある程度の空室は存在しますから、5%→15%となるようなイメージであり、稼働率が95%から85%にダウンする程度ですので、分配金は1割減程度のものです。加えて賃貸料の値下がりを織り込むとしても、分配金が半分になったりすることはありません。

■現状での予測(米商業用不動産、米失業率、EUの景気、ドル円相場)
リート投信価格の回復時期については不明ですが、主として米国商業用不動産の価格回復に連動すると仮定するならば、これが住宅価格回復に遅れること約1年といわれていますので、今年2010年の夏ごろには方向性が見えるものと思います。

また、注目指標である米国失業率は、2010年1月は9.7%となっており、やや早計かも知れませんが、どうやらピークアウトした印象です(※1)。

それ以外にも、信用不安くすぶるEUの経済状態についても、すでに述べました通り、ECBによる本格的政策金利引き下げのタイムラグが米国FRBに遅れること約1年でしたので、普通に考えればEUの景気回復も米国に1年遅れということであり、この2010年第1四半期からようやくプラス反転かと思います。EU全体の景気さえ本格的に回復し始めれば、経済状態が芳しくない一部のEU加盟国の信用不安問題は解消の方向に向かいます。

ドル円については、米国の政策金利が先行して上昇することはほぼ間違いなく、景気回復面で日本は遅れますので低金利が継続すると想定されることから、今後の基調としては円安方向となるはずです。

■当室の運用資産構成でインデックス・ファンドに勝てるか
以上の情勢判断から、現状では当室の投資資産構成は、内外リート投信にかなり傾斜した配分となっています。これが吉と出るか凶と出るかは不明ですが、少なくとも当面は高い利回りを享受しながら景気の回復を待つ方針でいます。このままの状態で、仮に株式インデックス・ファンドを相手に資産成長率を勝負したとしても、かなり有利に戦えるのではないかと思います。

なお、マルキール博士が株式インデックス・ファンドの長期投資収益率を平均7.5%と想定していることは、以前当室で状況証拠を集めて検討した株式投資期待収益率8%という想定数値に近似しており、心強いところです。いずれまたリート投信の分配金利回りが8%レベルまで低下してきた場合には、当室でも株式インデックス・ファンドを運用の中心に据える場面もあるものと思います。

「ウォール街のランダムウォーカー」はこのたび初めて読んでみましたが、よく研究・検証された内容であり、資産運用に関する名著の部類に入るものと思いますので、読まれていない方はご一読をお勧めします。

**********

◆(※1)「2月5日(ブルームバーグ):米労働省が5日に発表した1月の雇用統計によると、事業所調査に基づく非農業部門雇用者数(季節調整済み)は予想に反して前月比2万人減少したが、家計調査に基づく失業率は9.7%に低下した。家計調査に基づく就業者数(自営業者を含む)は1月に54万1000人増加(前月58万9000人減)、失業者も43万人減少した。この結果、失業率は9.7%と、昨年8月以来の水準まで低下した。」
(10/02/05 ブルームバーグ)http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=acmXWN7zpROk

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