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読む政治:ハイチPKO(その1) 防衛省、異例の主導

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 「国連からハイチPKOの増派要請が来ている。そっちでまとめてくれ」。1月22日午後、国会内の衆院第1委員室。審議が始まる直前、北沢俊美防衛相が平野博文官房長官に歩み寄り、せかすように耳元でささやいた。

 ハイチPKO(国連ハイチ安定化派遣団=MINUSTAH)に陸上自衛隊を派遣する--。北沢氏はすでに腹を固め、PKOを担当する国際平和協力本部を掌握する平野氏に派遣準備を進めるよう促したのだ。

 1月12日のハイチ大地震を受け、国連安保理は19日(日本時間20日)にPKOに3500人の増派要請を決議。翌日に通知された文書に軍事要員2000人の構成は歩兵部隊、施設部隊、ヘリ輸送などと記されていた。

 PKOに積極的な鳩山政権発足を受け、防衛省・自衛隊はPKO派遣候補地の検討に着手。スーダンやレバノンなど6地域に絞り込んでいた。ハイチは歩兵部隊による治安維持が主任務で候補地から外れていたが、がれき除去にあたる施設部隊派遣は東ティモールPKO(02~04年)の実績があった。自衛隊幹部は「『施設部隊』を見た瞬間、派遣の可能性があると思った」と明かす。自衛隊側の積極姿勢は北沢氏に伝わり、平野氏への耳打ちにつながった。

 それから2日後の24日午後。東京・帝国ホテルに平野氏が北沢氏、岡田克也外相らを集めた。「法的に本当に大丈夫だな」。平野氏は国際平和協力本部、外務・防衛両省の局長らに念を押した。岡田氏は「寝耳に水の表情」だったが、北沢氏は「自信満々だった」(出席者)という。

 平野氏が確認を迫ったのは、自衛隊参加の前提条件となるPKO5原則との整合性。ハイチを「紛争地域」と位置付けるなら(1)停戦合意の成立(2)紛争当事者の受け入れ同意--などを満たさなければならない。国際平和協力本部が内閣法制局と事前に協議した結果は「治安悪化はあるが紛争地域ではなく法的に派遣は可能」だった。会合は「派遣」でまとまり、平野氏が鳩山由紀夫首相に報告、了承を取り付けた。

 従来は、外交戦術の「手駒」として自衛隊のPKO派遣に積極的な外務省に対し、武器使用基準の制限などから防衛省・自衛隊が消極姿勢をとるのが通例だった。だが今回は「抵抗勢力」だった自衛隊が派遣を後押しし、防衛省が首相官邸と主導して実質4日でのスピード決着にこぎつけた。3閣僚会合後、岡田氏は北沢氏に「平野さんと2人で決めたんでしょう」と電話で不満をぶつけた。

毎日新聞 2010年2月15日 東京朝刊

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