ベビーブーム世代:ハナ大投証券の希望退職者の今(下)

 現役時代には信託業務の専門家と呼ばれていたイ某さん(55)は15カ月間、「就職ぶった切り」などポータルサイトの就職コーナーや各種起業サイトに随時アクセスし、再就職関連の情報を探し回った。しかしイさんは、「ほとんど若い人向けの情報ばかりで、わたしが必要とする情報を探すのは大変だった」と語った。

 初の職場としてハナ大投証券に入社し、25年間働いてきたAさん(51)は、15カ月間に証券会社3社の契約職ポストに応募したが、いずれも失敗に終わった。支店長を3年務めた経験が、逆に弱点となった。Aさんは、「支店長を長くやっていたため、顧客の密着管理は部下に任せ、組織管理に専念してきたが、面接ではわたしが保有する顧客の数を尋ねられ、当惑した」と語った。

 一方、再就職に成功した3人は、いずれも「知人のおかげだ」と語った。個人的なネットワークで仕事を見つけられたのであって、社会的・公共的システムの援助は一切受けなかったという話だ。

■「働きながら引退後に備えるのは可能か」

 「その気はあったが、職場で生き残ろうと夢中に駆け回る中で、ゆったりと引退の準備をするのは可能なのか」(イ某さん・50)

 今回取材に応じた20人全員が、現職時代に再就職の準備をきちんとできていなかった、と告白した。10年ほど前のアジア通貨危機の際、代理や課長だった彼らは、街角に放り出された先輩たちを見て、しっかり準備をしていなかったのだろうと思っていたが、全く違っていた。

 準備がおそろかになった原因の分析では、個人だけの責任ではない、という意見がよく聞かれた。ある回答者は、匿名を条件として、次のように反問した。「入社したとき、定年は60歳だったが、わたしは51歳で会社をリストラされた。早期退職現象は、現業でそれほど競争が激しくなったということを意味するが、果たして働きながら再就職の準備をするのは可能だろうか」

 キム某さん(47)は、「(再就職のために)資格を取得すればいいというが、先輩たちの中で、資格を取って再就職したという人は一人もいない」と語った。資格が再就職につながるようま社会的プログラムの構築が必要というわけだ。雇用支援を行う公共サービス機関の職員が一人で担当する国民の数を見ると、韓国(8199人)は日本(2217人)の4倍、イギリス(405人)の20倍に達する。それだけ社会的な支援システムの基盤が弱く、整備されていないということだ。企業側も、KTやサムスンなど一部の企業を除いては、退職者の再就職支援プログラムを実施しているところはほとんどない。

李仁烈(イ・インヨル)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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