ベビーブーム世代:「高望みしていないのに250戦全敗」(中)

 たびたび「年齢」という壁に阻まれた。イさんは「宅配の運転手でも、50歳以上の人は雇わないという。わたしは働き盛りなのに、社会ではすでに“お払い箱”扱いされている」と語った。家にいるばかりでは気まずいため、登山に出掛けて、山の頂上で一人涙をぬぐうことも多かった。イさんは「技術があれば、もっと容易に再就職できるだろうに、最も使い道がない仕事が“管理職”なようだ。大きな欲を出しているわけでもないのに、なぜこんなに大変なのか分からない」と語った。

 本格的な引退期を迎えたベビーブーム世代の再就職状況は、急速に悪化している。40代や50代の失業給与(日本の失業保険給付に相当)への新規申請者数は、過去5年間(2005-09年)で、40代が209%(12万442人→25万2785人)、50代が223%(9万5238人→21万3912人)と2倍以上も増えた。労働市場に出回る求人一人当たりの倍率は、50代では実に11倍。20代の競争率(1.9倍)の5倍を超えている。

 加えて、再就職に成功した55歳以上が仕事を見つけた経路を調べてみると、政府・公共機関(15.8%)や民間あっせん機関(10.9%)により支援よりも、友人や知人など個人的なネットワーク(47.2%)の方が絶対的だった(労働研究院、08年調べ)。韓国社会は、ベビーブーム世代の再就職のための公的システムを備えていない。

■40代と50代の違い

 シム・インボさん(仮名・48)=ソウル市永登浦区汝矣島洞=にとって、今冬の寒波はとりわけ厳しかった。再就職活動を行ったのは、今回が初めてではない。それでも、ここまで苦しい思いをしたことはなかった。

シムさんは大学卒業後、中堅の食品メーカーに入社し、12年間働いた。それからスポーツウエアメーカーに移り、4年間勤務した。さらに建設デザイン会社で1年半働き、半年前に退社した。シムさんは、すぐに汝矣島にある中堅の専門人材雇用支援センターを訪れた。以前勤めた会社を紹介してくれたのが、ここだった。

 シムさんは、「わずか2年前のことだが、そのころとは全く状況が違っている。当時は40代半ばで、修士の学位を持ち、管理職の経験もあったため、すぐに年俸6000万ウォン(約470万円)の仕事を見つけることができたが、ここ6カ月間は全く成果がない」と語った。いつ企業から連絡が来てもいいように、いつも携帯電話を持ち歩いているが、企業からの連絡は全くない。

 シムさんは、40代と50代の違いだと考えている。シムさんは「年齢が50歳に近づき、企業の態度がはっきり変わった。月に3、4度は面接の連絡が来るが、ほとんどは浄水器の販売や保険の営業社員といった仕事ばかり」と語った。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る