10年度予算案の公共事業の実施場所(個所付け)をめぐり、政府は15日、事業ごとに民主党県連や知事の要望の有無を記載した「仮配分」資料を、衆院予算委員会理事会に提出した。道路事業593路線の中で要望があったのは321路線で、うち190路線は概算要求時よりも事業費が増加した。要望なしで事業費が増えたのは18路線にとどまっており、仮配分の金額に要望が反映されたことが鮮明になった。【位川一郎、鈴木直】
民主党は10日に仮配分の資料を提出。しかし、民主党が都道府県連に示した資料の備考欄にあった「知事・県連等要望あり」などの記載を伏せたため、野党などから「違う資料だ」と批判が出ていた。今回は県連に示したのと同じ資料を提出した。
概算要求よりも事業費が増えた地域は、昨年の衆院選で民主党が議席を獲得し「好成績」を収めた地域が多い傾向となった。民主の現職衆院議員がいなくても議席の奪取に向け重要な地域では増額される傾向もうかがえた。
概算要求より事業費が増えた件数が多かったのは、北海道(9路線すべて)▽埼玉(5路線すべて)▽千葉(11路線中8路線)▽東京(8路線中7路線)▽静岡(11路線中7路線)▽鳥取(9路線中8路線)▽島根(同)など。
例えば、島根県の仁摩・温泉津道路は概算要求時点の事業費44億~52億円から55億~64億円に増額された。
北海道は鳩山由紀夫首相ら12選挙区中11選挙区で議席を獲得。地元要望9件すべてが増額され、要望のない事業でも8件で増額された。埼玉は15区中14区、千葉は13区中11区を民主党が占めた。
民主党の強い地域がすべて優遇されたわけではない。民主党の小沢一郎幹事長の地元・岩手は民主党が衆参6議席を独占しているが、要望11路線中増額は5路線。1路線が減額された。
民主党の「弱い」地域でも増額されたケースがある。鳥取は衆院に議席を持たないが、今夏の参院選には坂野重信元自治相を祖父に持つ女性が出馬する意向で、改選期を迎えた田村耕太郎参院議員が自民党を離党して民主入りした経緯がある。
道路など国直轄公共事業の個別の実施場所と正確な事業費は例年、予算が成立した後の3月末に国が決定している。政治家の地元への利益誘導の象徴とされ、自治体も含め、中央省庁への陳情合戦が展開されてきた。自公政権下では、概算要求後に国と地方が水面下で調整していたが、鳩山政権は概算要求時点で個別事業の事業費見通しを公表した。
毎日新聞 2010年2月15日 21時36分(最終更新 2月16日 0時54分)