■物語■

その人が自殺したのは、約一ヶ月半前のことだった。
彼が残した遺書はひどく短く、

『死にたいから死にます。
 許してください。
 許さないで下さい。』

遺書という遺書は、たったそれだけで。
―――彼は、その。たった三行の文面で、死に至ったのだ。


意味が、分からなかった。
しかし、その異常な死は異様に人を惹きつけて
自殺衝動は感染し、彼と同学級だった生徒は次々と自殺をしていくことになる。
そしてついに学級担任の先生が自殺した、その日から。数日後。
この異常事態を受けて、ついにこの学級は一時閉鎖することになったそうだ。
明日から、この教室は、学級閉鎖をするらしい。

明日から、


「つまり、死ぬなら今日、ということか。」




―――より一昔前のこの国の、
土葬から火葬へ、移り変わり始めた
緩やかに近代化の進む、奥まった、閉鎖的な、集落で。

それは、神が気を違えたかのような
激しい雨の、日のことだった。




■登場人物■

金子 しじみ

ごくごく普通の活字中毒者。
活字を愛するあまり会話が苦手で
多くを語らないが、
学級内では考え方はまともな方。
市川 団八

少し傲慢な演説家。しじみの幼馴染み。
会話と討論と、しじみと
しじみに愛されていると自負している
自分自身を愛している。
芥川 寅彦

過剰表現好きの老少年。
独特の言葉遣いでのうのうと話す。
基本のったりしているしじみを
気に入っている。
太宰 治夫

孤独を愛する暗がりの子。
突き放すような敬語で話し、
事実、他者を畏怖し拒絶している。
三十 六

生真面目な詩人。
会話中に比喩表現が目立つ。
学級委員長。
いつも笑顔で、
誰に対しても柔らかい対応をする。
川端 伊豆雪

卑屈で自虐的な自傷癖持ち。
いつも最終的に謝る。
親友の澪を愛し、
澪に依存していて、
澪が居ないと生きていけない。
藤木 澪

自然を愛する楽天家。
誰とでも仲良くになれる性格。
伊豆雪の親友。
急速に発展していく周辺社会に
嫌悪感を抱いている。





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