1990年代には、そのクリントン政権が、数年越しの懸案だった自動車摩擦をクローズアップしてジャパンバッシングを行うことによって、保護主義的な労働組合の組織票を取り込んで中間選挙へ向けて劣勢を挽回しようと試みた。
これに対し、今回のけん引役は議会民主党の方だ。昨年秋以来、連日のように、米国のメディアが、トヨタ車のアクセルペダルやブレーキシステムを巡るトラブルを報じていることに目を付けたのだ。3つもの委員会がそれぞれ公聴会を開き、その場にトヨタを招致しようとしている。
日程的には、2月24日が、豪雪で当初の10日の開催予定を延期した下院の「監視・政府改革委員会」、翌25日が同じく下院の「エネルギー・商業委員会」、そして3月2日が上院の「商業科学運輸委員会」となっている。
見逃せないのは、下院の「エネルギー・商業委員会」に所属し、同委員会のヘンリー・ワックスマン委員長と共同で公聴会を主催する同委員会の下部組織の「監視・調査小委員会」委員長をつとめるバート・ステューパック議員の存在だ。
実は、この人物は、ビッグスリーの本拠地であるミシガン州の選出で、形振り構わずビッグ3の利益を代弁することで知られる、強面の自動車議員の一人なのである。
日本ではほとんど関心を持たれることがなかったが、実は、この議員は昨秋から、米国車が日本のエコカーの補助金制度の対象になっていないのはアンフェアーだと主張し、1月20日に「監視・調査小委員会」を開催して、この問題を追及すると騒いでいた張本人である。
はっきり言って、この批判は的外れも甚だしい。米国車がエコカー補助金の対象でないのは、かつて米国政府がごり押しした結果に過ぎないからだ。というのは、1986年に米政府の要求に応じて、日本は輸入台数が年間2000台以下の自動車だけを対象にした簡易な優遇輸入制度の「輸入自動車特別取扱制度」(PHP)を設けた。
米国車のほとんどは、この制度に基づいて輸入されてきたため、コストのかかる排出ガス検査を免除されている。しかし、今回、それが裏目に出た。米国車には、エコ補助金の審査対象になる排出ガスの検査データが存在しないので、エコ補助金の支給対象になっていなかったのだ。
だが、ステューパック委員長は、そんな道理を斟酌することのない人物だ。委員長として、小委員会で日本のエコ補助金制度をある種の非関税障壁として取り上げて槍玉にあげる構えを見せて、圧力をかけてきていた。
経済産業省は、"大人の対応"を見せた。1月19日付で「環境・景気刺激策のオプションを増やすため、(個別に審査し)要件を満たせば補助金の対象とする」と、あくまでも動機は国内の景気刺激策の充実であると位置付けて、米国側が実をとれるようにあっさり譲歩したのだ。
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