「1994年の頃とそっくりですよ。アメリカが日本政府に、米国製自動車部品の購入拡大目標を表明しろと迫った時期があったでしょう。ワシントンはあれとそっくりな状況なのです。11月に中間選挙を控えて、議会民主党は支持率が低迷して焦っています。
まず、分かり易い敵を外に作り、その敵を威勢よく強硬路線で叩いてみせることによって、人気を回復しようという意図が露骨ですよ。トヨタは公聴会で、去年、米政府の救済を受けたビッグスリーよりひどい目にあわされかねません」
ワシントンでのロビイスト活動の経験もある専門家は、筆者の取材にこう危機感をあらわにした。
1990年代半ばにかけて宮澤喜一、細川護煕、羽田孜、村山富市、橋本龍太郎の5代にわたる内閣を苦しめた、あの日米自動車摩擦と構図がそっくりであり、事態を軽く見てはいけないというのだ。
40歳代半ば以上の読者には、ご記憶の方もあるだろう。あれは、長い日米経済摩擦の中でも最悪の案件のひとつだった。特に、クライマックスとなった95年の交渉では、米民主党のクリントン政権は、自由貿易の盟主のプライドをかなぐり捨ててきた。
「交渉が決裂したら、13種類の高級車に100%の関税を課す」と露骨に報復をちらつかせ、自動車部品の輸入拡大のために日本政府が数値目標を設定し、その履行を保証するように迫ってきたのだ。政府が数値目標を設定するなどというのは、管理貿易そのものである。
日本政府は自由貿易・自由主義経済を歪めかねない行為だと、最後まで拒否する姿勢を貫き、内外に面目を保とうとした。しかし、政府のメンツの代わりに、日本側はトヨタ自動車などメーカー5社が自主的な部品購入計画と北米での現地生産の拡大を公約するという大きな代償を支払った。そうすることによって、ようやく、この摩擦を収拾させたのだ。
そして今、冒頭の専門家は歴史が巡り、再びあの不毛な争いが米民主党によって繰り返されかねない、と危惧している。
「監視・調査小委員会」委員長の正体
たしかに背景が酷似しているのは事実だ。歴史的な変革に向けた期待を背に受けて颯爽と登場した民主党政権は、あのときと同じように鬼門の医療保険改革に2年間を費やしながら失敗寸前の状況にある。経済全体の回復ペースも遅く、国民も不満を募らせている。
米調査会社のギャラップが今年1月18日に公表した世論調査は、米国民の民主党離れを浮き彫りにした。この調査の「就任から1年間の平均支持率」によると、オバマ大統領のそれは57%と、第2次世界大戦後に選挙を経て就任した大統領の中でクリントン氏(49%)に次ぎ、レーガン氏と並ぶワースト2位だったのだ。
特に、対象の期間を初年の第4四半期だけ、つまり直近に限ると、人気の凋落傾向はさらに鮮明になってくる。オバマ氏のそれは51%に急低下し、クリントン、レーガン両氏と同率の最下位に甘んじているのである。
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