経験・資金ゼロから農業を始めるにはどうするかプレジデント2月15日(月) 10時 0分配信 / 経済 - 経済総合
農業はラーメン屋や弁護士、職人と同じ自営業ですから、まずはお金がなければ始められません。さらに農機具も準備しなければならず、土地の確保も難しく、住宅も必要です。自己資金は、例えば1年分の生活費とランニングコストに充てる500万円プラス設備投資300万円として、最低でも計800万円が必要です。それ以下の資金で可能な選択肢となると、せいぜい露地栽培の野菜くらいしかありません。 農業で食えるようになるには3年かかるといわれますから、できれば2年間は自己資金でやっていけるように、2000万円くらいの準備が理想でしょう。簡単ではありませんよ。就農の理由が、今置かれている状況からの逃避であれば、農業の現場はもっとひどい事態を招くかもしれないことを予測しておくべきですね。農業は、逃避先としては不適切です。 だからといって、就農をそれほど恐れる必要もありません。就農して食えるようになった人は半分、という統計もあります。食っていけるという意味での成功率は、ほかの自営業に比べれば随分高いといえます。そもそも地域でできるものですから、その土地にしかない名産を作れば、そう多くのライバルがいるわけではありません。経験がなくても、やり方次第で充分に農業を始めることはできます。 また、従来は土地の確保がネックでしたが、それは今後、どんどん解消されていく可能性があります。昨年の新規就農者数6万人中、半分近くを占める60歳以上の人々の大半は趣味的農業です。70歳以上の就農者は、今後5年以上経てばずいぶん減っていくでしょうし、後継者も少ない。そのため、今後は広い耕地が余り始めます。すでに耕作放棄されて草ボウボウになった農地が問題になっています。だから、農業を目指す若者が「自分たちがやります」と言えば、やらせてくれる可能性は相当高くなるでしょう。過疎化で住宅の低価格化も進むし、安い中古農機具も出てくるかもしれません。 就農で誰もが抱くのは、そもそも自分に農作物が作れるかという不安です。だから、まず自分で実験してみるとよいでしょう。 ホームセンターでピーマンの苗1本とジュースなどのスチール缶4本くらいの土を買って作ってみれば、感触を掴めます。プロ農家はひと夏に1本の苗で10キログラムのピーマンを収穫します。それを目安に、3キログラム以下はさらに修業が必要。6キログラム取れれば才能あり。9キログラムいければ即OK、と判断してください。ナス科の作物にはある程度のテクニックが必要ですから、これができれば他の作物も作れます。同じように栄養を独り占めさせた状態で米を作ってみても、指標にはなりません。 牛となると実験そのものができませんが(笑)、肉牛の場合、飼料や子牛の値段が高騰し、小売価格は下落しているので、今の時代に肉牛をやることはなかなか勧められませんね。 就農希望者にぜひ言っておきたいのが、机上の空論でもよいから、まず収支計画を立ててから専門の窓口に相談せよ、ということです。場所と作物と投資額を決め、自分なりの計画を立てます。それがなければ、相談される側もアドバイスしようがないからです。 私はシンクタンク退社後に農業を始めて約15年が経ちます。今は年平均60頭の肉牛を中心に大豆や麦も作っています。麦は、赤さび病などに気をつければ放っておいても育ちます。年収はジェットコースターみたいに上下しますが(笑)、麦は30ヘクタール程度の規模でやれば、年収1000万円に届く流通と市場が準備されています。そうした食品流通の動向もよく見て、何を手掛けるかをよく研究することです。いずれにせよ、農業には充分可能性がありますよ。 ----------------------------------------------------- 農業経営 有坪民雄 1964年、兵庫県生まれ。船井総研を経て農業に従事。著書に『農業で儲けたいならこうしなさい!』。 藤野光太郎=構成 作田祥一=撮影 【関連記事】 ・ 田中義剛―半農半芸2つのプロの顔 ・ 数百億の取引から230円のドーナツ販売へ ・ 将来を見すえた「不況時代の副業のススメ」 ・ 趣味が副業でストレス解消! ・ 「田舎には夢がない」という子に何をすべきか/横山 清
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