2010年2月15日 10時00分 | |
(7時間44分前に更新) |
米軍普天間飛行場の移転先を検討している与党協議は大詰めを迎えている。「県外・国外」を求める地元民意をアピールすべき時機だが、仲井真弘多知事から何の発信もないのが実に不可解だ。
普天間をめぐる政治的バランスはどちらに傾くのか予断を許さない局面だ。
名護市辺野古へ移設する現行案は、反対派の新市長誕生によって具体性がなくなった。とはいえ県外・国外を政府が検討している様子はうかがえず、別の形の県内移設に流れる可能性がある。
与党3党の沖縄基地問題検討委員会は17日の会合で各党案を提示する予定だ。いまのところ、社民党は米領グアムを軸に国内の複数の候補地を組み合わせた案を、国民新党は普天間や嘉手納基地の機能を県内外に分散する「新嘉手納統合案」を含む2案を提示する見通しだ。
民主党は具体案を明らかにしていないが、政権に就いたとたん「県外・国外」を封印。長島昭久防衛政務官は11日の民放番組で嘉手納統合案に言及し、「(騒音など)全体を減らしていくことができるという見通しが立つなら選択肢の一つだ」と語った。
岡田克也外相が検討し、地元の反発を招いた嘉手納統合案を、政府は落としどころと見込んでいる可能性がある。
そんな流動的な局面にあって、仲井真知事の存在感があまりに薄い。「政府の検討結果を踏まえた上で判断する」と受け身のままでは知事としてのリーダーシップが問われる。県民意思を代表する職責があるはずだ。
与党3党の検討委員会に防衛省が提出した資料「海兵隊の意義・役割」は、「東アジアの各地域に距離的に近い」と沖縄の地理的優位性を誇張する。しかし隊員を運ぶ肝心の艦船は長崎県佐世保を母港としている機能配置のちぐはぐさには一切触れていない。
いまどき地理的優位性を強調するのなら、沖縄の負担軽減などあり得ない。役人は十分な情報を政治家に提供すべきだが、海兵隊の駐留兵員すら防衛省に手持ち資料がなく、沖縄県の統計を借用するお粗末なありさまだ。現状を変えたがらない行政側からは県内に押し込めようとする力学が強く働いている。
米政府は小沢一郎幹事長の5月訪米を意識し、日本側提案は「耳を傾ける」(キャンベル国務次官補)としているが、現行案を最善とする基本姿勢は変えていない。
社民党が「県外・国外」を主張するだけで、「県内」を前提とする意見が大勢だ。
鳩山由紀夫首相の政治決断に期待したいが、小沢幹事長とともに「政治とカネ」の問題で身動きが取れない。
しかし県内政党は「県外・国外」で一本化しつつある。自民、公明両党とも従来の県内移設容認の方針を転換し、県議会は与野党一致の決議案をまとめようとしている。
さまざまな政治力学が交錯するいまこそ、知事は姿勢を鮮明にし、民意を政府にぶつけるべきだ。このままでは知事の曖昧(あいまい)な態度が「県内容認」と受け取られ、民意とは逆の方向に事態が進みかねない。