やつれた姿で立ちつくす巨大な仏像を、全国各地で目にするようになった。バブル期を中心に観光客を呼び込むために競うように建てられた「観光大仏」だ。経営的に成り立たずにうち捨てられ、客を呼ぶどころか、厄介モノになっているケースもある。「成仏」する日は来るのか。
兵庫県淡路島北東部の海岸沿いに、高さ100メートル(台座部分が20メートル)の「世界平和大観音像」がそびえたつ。1982年、島出身の不動産業者が建立した。美術館やレストラン、ホテルも併設。当初は観光バスが列をなし、1日数千人が訪れたという。
しかし、次第に人気は薄れ、06年に施設は閉鎖。所有者は亡くなり、だれが管理者なのかさえも、わからない状態だ。人の背丈以上の雑草が生い茂るなかで、表面のモルタルがはがれた仏像があわれな姿をさらしている。
「大地震が来たら不安だし、何が飛んでくるか分からない。誰かにどうにかしてほしい」。近くでレストランを経営する庄司功さん(59)は、恨めしそうに言った。
以前、観音像の隣に立つ塔の鈴が落ち、レストランの屋根が壊れた。最近も塔の銅板が敷地内によく飛んでくる。
住民から要望を受けた淡路市が昨年7月、倒壊の恐れがないか調査を試みたが、所有者が不明のため、敷地の外から見るのが精いっぱい。市の担当者は「撤去には数億円かかりそうだ。民間施設の取り壊しや修繕に税金は使えない」と頭を抱える。
観光大仏は、バブル期に利益をあげた業者らが「ふるさとへの恩返し」と、客寄せに造るケースが目立った。
典型例とされるのが、奈良の大仏より2メートル大きいことを売りものにした福井県勝山市の「越前大仏」だ。高さ75メートルの五重塔などもある施設は、関西の大手タクシーグループの創業者(故人)が385億円をかけて87年に建立。その年こそ約70万人の客でにぎわったが、1人3千円(当初)と高額な拝観料が敬遠されるなどして客足は遠のいた。