あるCGアイドルの失敗c
アイドル氷河期の1996年、広末涼子的・綾波レイ的ルックス印象のモデリングイメージでデビューした、れっきとしたホリプロ所属アイドルであるパーチャルCGアイドル、7億円の予算で産み出されたと言われる『伊達杏子DK96』。しかし、彼女の売り出しプロジェクトは、ものの見事に失敗しました。様々なプロモーションはことごとく駄々スベリ。何故か。時代がまだまだ暗黒時代にあったから? 率直に言えば、それ以前の問題だと断言できます。

それは何か。答えは簡単、肝心の伊達杏子自身のビジュアル・イメージがお祖末過ぎたせいです。正直、「彼女」は美人でも美少女でもなかった。微妙に意匠がズレでいたのです。広末の持つ素朴さ、飾り気のない魅力を頂こうという方針は分かりますが、CGなんだから顔を奇麗にデザインしたって良いじゃないですか。ホリプロには、アイドルのルックス審美眼に大疑問符がついた時代の前科がありますが、(同時期に完璧な美少女・深田恭子や平山綾を送り出しているくせに)またやっちまったな‥と心ある者は、みな感じたでしょう。その後のテコ入れも効果なく、以降デジタルな闇に消滅したかと患われていた2007年、ネットゲーム『セカンドライフ』のアバターとして、彼女は復活させられました。黒髪が金髪に改変されて。しかし、根本的な違いの印象もなく、特に話題にもならず、結局やはり彼女はサイバー墓場へと...?
CGアイドルには成功例もあります。CDデビューもした『テライユキ』('98)。彼女のデザインは「伊達杏子を完成させた」印象であり、それが全てです。モデリングデータ集CD-ROM2万枚以上の売れ行きがそれを語っています。お願いです。人の手で成し得る範囲のことならば、ちゃんと作って下さい。