■ハウステンボス “千年都市”理念は揺るがず

4.訪れてのインプレッション(その1)

 ハウステンボスは東京ドーム33個分の規模で、そのすべてを体感しようとなると、「リゾート」らしく数日の落ち着いたスケジュールが絶対である。物見遊山的に短時間で人気の場所だけを"追っかけ"するような場所ではない。そう、ひとつの町の魅力を探るのに、数時間というのは全く失礼なのである。
 しかし、我々は今回、その失礼を自ら選んでしまった。従って以下のレポートは、2002年以降に展開される新しい取り組みに関連した場所やサービスに限られる。ホテルの宿泊を含め、ぜひ次は詳細なインプレッションをお届けしたい。

○ランドマークにふわさしい「ドムトールン」 
 取材チームは長崎市内の「長崎ターミナルホテル」に前泊、アポイントの10時に間に合うよう、8時にホテルを出た。しかし当日は深い霧が発生、高速道路は通行止めとなっていた。ここで土地勘のある地元出身の記者のナビゲーションで、風光明媚な大村湾沿いの国道を、農作業に出かける軽トラックに続いてのんびりと北上、結局30分の遅れでハウステンボスに到着した。

 駐車場は広く、貸し切りバス、ホテル宿泊者専用そして一般のエリアに分かれていた。すでにそこから見える「ハウステンボス ジェイアール全日空ホテル」や高さ105mのランドマーク「ドムトールン」(教会の塔を再現)を代表する建築デザインによって、異様な期待感が高揚してくる。それに水を差すのが駐車場の案内係の中年男性諸君で、にこりともしない。ずっと仏頂面で、何となく動きものんびりしている。最初のコンタクトを受け持つ立場として、意識改革が必要だ。


 ハウステンボスの"入国手続き"を行うゲート、「ブルーケレン」の受付窓口で、同社社長室広報グループ・吉野主任と落ち合い、スタッフカーに乗って管理用道路を「ホテルアムステルダム」までショートカット。同館でお話を伺った後に、ヨットハーバー見ながら「オレンジ広場」に出る。何気ない景観(十分美しいが)の港だが、ここにも仕掛けがある。船着場のデッキは木で造られているのだが、防腐剤を使わずに高強度、高耐久性を持った「ボンゴシ」という木材を使用している。

 コンクリート護岸のような味気ない素材で港の景観を壊さず、美しさを維持できるようにとの配慮という。


○乗船客で賑わう「観光丸」
 「オレンジ広場」は、"港町・海の入出国口"「スパーケンブルグ」にある。まさに港町の景観で、大村湾の洋上クルーズが楽しめる大型の帆船「観光丸」がちょうど出港するタイミングであった。この日はあまり天気に恵まれず、まだオフシーズンのさなか、しかも平日であったが、結構な乗船で賑わっていた。


○レストランの価格は市場メカニズムとは別の体系
 ここで既に時計は12時を過ぎて、ランチタイムを迎えていた。そこで、オレンジ広場を臨む位置に建つ「ホテルデンハーグ」の1階にある地中海料理「エクセルシオール」で、ランチメニューを選択した。ホテルのレストランとして妥当な味とサービスだった。非日常空間だから世間は関係ないと言われればそれまでだが、財布の中身は常に世間と一体化している。その意味でランチのプライスは少々強気過ぎないかと感じた。少なくとも来場者4割は、コストパフォーマンスの高い三つ星系のレストランを選べる環境にある東阪からの入場なのだから。


○ベアトリクス宮殿を再現「パレス ハウステンボス」

 「ホテルデンハーグ」の裏にある花と緑豊かな並木道を進み、「パレス ハウステンボス」に入場する。

ここは、オランダのベアトリクス女王陛下の宮殿を再現した空間で、特にバロック式と言われる庭園はすばらしいデザインと管理である。当日は「チューリップ祭り」の開催中で、至る所でチューリップがカラーリングを増やしていた。

 宮殿は、美術館とライデン大学留学生の校舎として使われており、建物外観に比べればそれなりの内装である。呼び物は、美術館のオランダ人の芸術家、ロブ・スフォルテ氏が「延べ40人のアシスタントと4年の歳月をかけて」制作した日本最大級のドーム壁画である。

「反戦・平和」がテーマで、高さ19m、幅11m、キャンパスの広さは825平方メートルにも及ぶ巨大壁画の規模もあるが、その表現が見ている我々に迫ってくる。これ以外の空間はそれほど熱を入れている様子はなく、イベントに連動した「チューリップミュージアム」が設けられてはいたが、それでも少々持てあまし気味に感じた。

 宮殿の裏にあるバロック庭園は、「18世紀、フランスの造園家ダニエル・マローがオランダの宮殿のために設計したが実現しなかった「幻の庭園」を、保存されていた図面をもとに甦らせた」と説明されている。ギリシャ神話をペースに、神殿風あずま屋、噴水、彫刻、装飾花壇を美しくレイアウトしたのが特徴である。


○環境再生・保全で自然に囲まれるフォレストパーク
 「パレス ハウステンボス」の北側、「フォレストパーク」は、高木で周囲と決界した中の湖を囲むようにして105戸の「別荘風コテージ」が建てられている。すべての別荘が池に面しているのだが、ハウステンボスの徹底した水質環境管理によって、妙な臭いや汚れなど一切見られない清水で、メゾネットタイプ77平方メートルのゆったりとしたリビングルームと寝室それぞれ窓を開けての快適な時間が過ごせる。
 なお、受付を兼ねた「フォレストビラ」にはプールとサウナが常備した「ウエルネスセンター」が付属していた。ちなみに「1泊2食付きパック」を利用すると、3名で休前日は一人23,800円(税別)で、「ホテルデンハーグ」のレストランと同様のメニューを部屋まで運んでくれることを考えると、かなりオトクに思うのは自分だけだろうか?




図18 メインゲート




図19 「モーレンクラブ」会員は別ゲート(上)、案内サインを大きく、はっきりさせた新しい取り組み例(下)


図20 「オレンジ広場」


図21 「ボンゴシ」を使ったマリーナのデッキ


図22 「観光丸」


図23 「ホテルデンハーグ」外観(公式サイトより)


図24 チューリップで飾られたバスがメインゲートから往復


図25 これもチューリップで鮮やかに装飾


図26 日本最大級のドーム壁画。オランダ人アーティストによる


図27 「チューリップミュージアム」を開催


図28 「バロック庭園」この維持管理状態はすばらしい


図29 「フォレストパーク」。静かに時間が過ぎ去っていく


4.訪れてのインプレッション(その2)

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