■ハウステンボス “千年都市”理念は揺るがず |
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2.現況 (その3) エコロジーとエコノミー共存都市 (4)経済力 都市にはカネが落ちる。さらにそのカネが循環することで、多数の人やモノが集まり、投資も付いてくる。従って、経済力の伴わない町作りなど、遺跡のレプリカづくりと変わりはない。さらに、都市は情報のダイナミズムのなかでグローバルなコミュニケーションの共有が必要で、経済の独占・孤立は許容されない。それを求めるのは都市づくりではなく、単純な土地再開発事業である。 ハウステンボスの経営は、バブル崩壊と長期不況により、累積赤字を解消できず、創業者の神近前社長の退任と引き替えに金融機関の債権放棄や金利の減免、銀行主導による資本金の拡大など、明日をもしれない状態というのが、ネガティブ報道によってほぼ常識化している。確かに現段階でも、格付けを上げるような結果が出ていないようだが、都市の経済波及効果の意味では、すでに「大都市」の貫禄を持ち始めている。 ○長崎県内総生産の5%、2,068億円の経済波及効果 平成14年(2002)1月、日本銀行長崎支店は『ハウステンボスが長崎県経済に占めるプレゼンス』として、県内経済への波及効果を「県内総生産の約5%の約2,068億円」との推計を発表した。 (http://www3.boj.or.jp/nagasaki/htb.htm) このドキュメントによると、ハウステンボスの経済果には、まず 1)観光県長崎の知名度を高めて国内外の観光客誘致に刺激、2)オープン当初以来の用地取得や設備投資(1,954億円)、3)固定資産等の税負担?を指摘。 その上で、ハウステンボスの平成12年度(2000)の売上高459億円は、長崎県内の観光消費額2,930億円の16%を占める事実を確認。これに、ハウステンボス入場者が他施設に宿泊した場合の消費と、日帰り客の交通費を加えて、長崎県内総生産44,155億円の約5%に相当する2,068億円の経済波及効果があると推計した。 つまりハウステンボスの経営は、年間500億円近い売上があっても、不動産事業が足を引っ張ってなかなか収益体質になれないが、この町に関与する事業者、行政にとってはいわば常催のサッカーワールドカップ、潤いの源泉になっているわけだ。 表 日銀長崎支店によるシミュレーション結果 ○地元還元を意識した園内消費の仕入・発注 日本銀行の推計は、観光分野についての推計だが、実はこれだけではない。 例をあげよう。園内は年間を通じて花で飾られているが、生産から維持管理まですべて地元の業者に発注しており、これだけで年間6億円以上のカネが動く。例えば毎春開催される恒例のイベント「チューリップ祭」は、100万本の多種多彩なチューリップで園内を飾るのだが、その発注先はすべて長崎県内である。また、ホテル直営のレストランでは、地元の食材をふんだんに使い、ジャガイモやアスパラガスなどは100%県内産を使用している。このように、大村湾の自然と共生していく環境設計は、同じ自然を共有する資源へこだわりを増幅する。 再開発事業なら、迷わずインターネットを利用した受発注を駆使するビッグテナントを誘致・依存し、コストダウンと収益確保が進むのであるが・・・。ハウステンボスは、新設のサッカードームが今後直面する、日頃の運営収益から維持管理コストと建設時の借金返済を続ける難しい経営を先んじていたのかもしれない。 ○Heartful Town(ハートフルタウン)をコンセプト しかし、「アメリカ型テーマパークと一線を画し、環境に配慮した街づくり」の理念を具現化し、次の時代へとつないでいくには、町を経営する企業に強い経営基盤が必要なのは言うまでもない。町が強いからこそ、そこにカネやヒトそして知恵が集まり、熟成が早まっていく。そこで、ハウステンボスは、開園10周年事業を契機に、守りから攻めへと転換する経営強化のための多くの新しい施策を打ち出した。 まず、「エコノミー&エコロジーとの共存」「環境共生都市」「千年未来都市」などのコンセプトワードから、多数の解釈やコピーライティングが生まれ統一性に欠けていた町の性格表現を、 「人と人、人と自然、人と文化がふれあい、交流する街。そこから生まれるコミュニケーションとにぎわい。四季を感じさせる花。ゆったりと流れる運河。「やすらぎの時間」。様々な記念日やブライダル、修学・卒業旅行・・・。世代を超えて、人生の節目に『大切な人と、大切な時』を過ごせる街」と定義。 そして、次の10年をスパンとする事業コンセプトを、上記定義を受けて「Heartful Town(ハートフルタウン)」と名付けたのである。 |
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グラフ2 入場者数の男女比率 |
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