■ハウステンボス “千年都市”理念は揺るがず |
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2.現況 (その2) エコロジーとエコノミー共存都市 (3)都市機能 人が暮らすには、住宅はもちろん学んだり働く場所、そして生活インフラが必要になる。 まずは生活を可能にするための都市基盤つまりインフラづくりだが、これは環境に配慮しながら一体となって進められてきた経緯がある。 次は住宅と、働く場所である。デザインテーマのオランダへの侮辱にならないように、そのクオリティにあっても、暮らす者、訪れる者だれもが満足し羨望の念を与えるレベルとした。このあたりが「従業員用の宿舎」「政治的な地元雇用」「簡易汚泥処理」でちゃちゃっと作った遊び空間とは大きく異なる。少なくとも、モデルハウスと見本市のブースくらいの差がある。 1)住機能 短期・中期滞在型リゾート、さらには分譲住宅やマンションも含む1つの「定住型都市」として構想され、行政上も「佐世保市ハウステンボス町」という地名である。 ○不動産事業を代表するのが「ワッセナー」 その象徴が「ワッセナー」と呼ぶ戸建129戸、マンション120戸の住宅である。定住型はもちろん、別荘型、保養所型で、専門の管理センターで24時間の警備体制がとられている。戸建住戸は、庭先にボートの接岸が可能で、そのまま家から海に抜けられるウォーターフロント環境となっている。 「ハウステンボスヒルズ」は4棟272戸の分譲マンションで、現在「ハウステンボス町」の住民はこちらが中心である。 こうした住宅の整備によって、合計3,500戸、約10,000人の定住を計画しているのだが、前述のように順調ではない。それは『ワッセナー』販売の思わぬ不調を原因とする。ハウステンボスのオープンと共に分譲が開始されたバブルの時分は、プライベートマリーナが付いた高級・高額別荘ほど大人気となって予約が殺到、キャンセル待ちの状態にあった。ところが、建物が完成して引き渡しの段になると、バブルは終わり不況に突入、キャンセルが相次ぎ、以後の不況で長期在庫を抱える羽目に陥ったのである。 図2 「ハウステンボスヒルズ」(同社施設案内より) ○価格を下げ、「第二の定住」を訴求し好反応 そこで現在、販売価格の見直し(平均1億円→3,000万円?6,000万円に値下げ)に借地権分譲も加えるなど、マーケットインの商品性を持たせている。 また、ハウステンボス=テーマパークとの認知が根強く(その理由は前述)、別荘地があることが知られていない首都圏方面での営業力強化のために、販売代理制を導入し、大手不動産会社に委託を行い、「第二の定住地」としての訴求を行った。これが好評で、100組以上が見学に訪れた結果、2001年度には27戸が販売に結びついた。今後も、旅館業法の取得のうえ宿泊体験を提供するなどの努力を続けていくという。 現在の住民は800人。最初の一歩である。 図3 「ワッセナー」の全景(同社会社案内より) 2)学機能 ○「長崎国際大学」のキャンパスを兼ねる オランダ・ライデン大学がハウステンボス分校を置いて、年間約20名の留学生を受け入れている。 さらに同じくハウステンボス町内に平成12年(2000)、長崎国際大学が開校した。同校は、人間社会学部(国際観光学科、社会福祉学科)、そして平成14年(2002)4月からは健康管理学部(健康栄養学科)が加わったカレッジである。ハウステンボスをキャンパスの一部としており、国際交流を進め、留学生を受け入れ、また地域住民とともにハウステンボスの国際性豊かなまちづくりへの貢献を使命としている。 大学のキャンパス機能を果たすために、ハウステンボスではコンベンション施設を充実させている。機能連帯の例を挙げよう。平成15年(2003)7月に予定されている「第17回アジア太平洋社会福祉教育・専門職会議」は、「平和と公正とソーシャルワーク:21世紀におけるアジア太平洋のソーシャルワークの展望」をテーマに、アジア・太平洋地域各国、国際機関等約30カ国から6団体、約600名が参加して、長崎国際大学及びハウステンボスを会場に開催される。 図4 「長崎国際大学」のキャンパスであることを表示(上)、下は隣接している実際のキャンパス 3)職機能 「観光都市」で、働く場所こそがこれまで紹介されてきた「テーマパーク」「リゾート」の分野であり、訪れる人々への非日常体験の提供である。 「食=レストラン&バー」、「文化=ミュージアム」、「娯楽=アミューズメント」、「泊=ホテル」そして「ショッピング」のジャンルに、それぞれ多種多様な空間とアトラクション、イベント等が用意されている。 これらの都市サービスによって、再建策で雇用が抑制されているなか、3,000人規模の「職場」が機能している。そしてここに年間、385万人のビジターが訪れ、約460億円のカネが動いている(平成12/2000年度)。 グラフ1 入場者数の推移。96年がピークでその後は急速に減少へ 4)動機能 1,520,000平方メートル(46万坪)という広大な敷地に、その内外を全長6kmに及ぶ運河が流れ、延床面積200,000平方メートルに及ぶ150棟の建築がある。半端な規模ではない。よって、都市内を移動するための交通手段が必要となる。最もハウステンボスらしいのが、運河を使った水運で、町のゲートと中心街を結ぶ「カナルクルーザー」が代表する。また、陸路では、町の景観に合致したクラッシックデザインのタクシーとバスの運行がある。いずれも、まだ定住者が少ない今のところは、観光客の足として、場内遊覧が専らの役目である。 図5 場内のアクセス手段(施設案内より) |
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