ナインティナイン 矢部浩之について


やはり、矢部さんのすごいところと言えば、
高校時代にサッカー部で知り合った先輩である岡村さんの才能を見抜き、
お笑いの世界に誘ったということだ。ゆえに、
矢部さん無くしてナインティナインはありえなかったわけだ


今となっては、ツッコミ芸人の代表とも言える矢部さんだが、
正直、矢部さんのツッコミのレベルはそれ程に高くはない。しかし、
新人の頃に比べると、急激にツッコミのレベルはアップしているのも事実。
それは「努力」で培った岡村さんの芸とは異なり(当然、努力もされたことであろうが)、
矢部さんの芸は「経験」で培ったと言えると思う。
ほとんどの吉本芸人は、やはり同じ事務所の吉本芸人と仕事をすることが多く、
その大部分が「馴れ合い」になってしまうことが多い。
しかし、矢部さんは若くして東京での仕事を経験したのが幸いしたのであろう、
吉本芸人以外の他事務所のタレントや東京での大きなプレッシャーの中で
養われた「経験」からくるツッコミ芸だと言えはしないだろうか?
昔は本当にヘタであり、矢部さん自身も「吉本印天然素材」の頃の
コントをしている当時の自分達のVTRを見て、
「オレ、めっちゃヘタや…」と、素で発言をしてしまうほどだった。


NSC入学当時は、なんと、矢部さんが「ボケ担当」だったのだ。
岡村さんも誘われた身、言われるままツッコミ役をしていた。
NSCの講師に「君たちは入れ替わった方がいいよ。」との一言で、
ボケとツッコミが入れ替わったのだ。
(私に言わせれば、岡村さんをツッコミ担当にさせる矢部さんの考えは明らかに間違えで、
講師に指摘される前に自分で気づけなかったのが不思議なくらいだが。)
そしてこれを機にツッコミ・矢部浩之が誕生したわけである。
その矢部さんのツッコミだがダウンタウン浜田さんそっくりだったという印象がある。
矢部さんのツッコミは明石家さんまさんダウンタウン浜田さん
足して2で割った感じだった。しかし、正直言うと、
「ツッコミの上手さ」では浜田さんに負けるかもしれないが、
「ツッコミのおもしろさ」では、矢部さんの方が上だと感じる。
だからこそ、二番煎じなのがもったいないところだ。
矢部さんが浜田さんを模倣していたのは事実だとは思うのだが、
もちろん、そっくりそのままだと思ってはいない。


ダウンタウン浜田さんのツッコミは、松本さんのボケをさらに活かすツッコミである。
であるがゆえに、松本さんのツッコミは浜田さん以外ありえないと思わされる。
しかし、ナインティナインの場合、
岡村さんのツッコミは矢部さん以外ありえないとは、私は思わない。
浜田さんのツッコミは松本さんのボケを活かす事はあっても超えることは無い。
しかし、矢部さんのツッコミは岡村さんのボケを超えることがある
それがいいことか悪いことはわからないのだが、
矢部さんの発言単体で笑いが発生するのである。
岡村さんのボケの印象が薄くなるのである。
2004年のFNS27時間テレビで、
明石家さんまさんに、「ツッコミが冷たいねん!」
本番中マジトーンでダメ出しされた矢部さんだが、
それは言い換えると、「ボケを活かせてあげれていない」という事だと言える。
であるがゆえに、ボケを活かすようなうまいツッコミの力はそれ程無い。


だからと言って、矢部さんのツッコミが下手だとは決して思わない。
言葉で説明するのは難しいのだが、
ボケそのものが持つおもしろさを活かすツッコミというよりも、
そのボケが持っていないおもしろさを活かすというツッコミをする。
ツッコむ時に解釈の入れ違えをするのだ。
これは完全に矢部さんも無意識であろうが、
ボケた本人が意図してない解釈(よりおもしろい解釈)でツッコんでいるように思える。


とは言え、矢部さんのツッコミは百発百中じゃないではないのも事実。
ツッコミとしてはやってはいけない、本当のボケつぶしになっている事も多い。
そのときのツッコミレベルは新人以下である。
形式だけでツッコんでいることがよくある。
ボケを活かすツッコミに比べて、ボケをつぶすツッコミが非常に多い。
そうなってくると、矢部さんの計算がズバズバ決まっていたということではない。、
矢部さんは、「ボケを叩き潰すこと」がツッコミであると、
勘違いしているのではないかと思う。
ツッコミは確かに目立たず裏方的な役割であり、ボケありきのツッコミである。
しかし、矢部さんの中では、ツッコミありきのボケとなっている。
ボケを活かしたいのでなく、自分がツッコみたいから
ボケに存在してほしいという解釈。」である。
そのあたりのちょっとした認識のズレが、
大きな的外れのツッコミを生んでいることに早く気づかねばならない


ツッコミ芸人の代表とも言える矢部さんだが、
しかしそれは、ボケもできない、ネタも作れないがゆえのツッコミ役だと思っている。
いわば消去法で残ったのが、たまたまツッコミしかなかったという感じ。
新人の頃のナインティナインをテレビで見て、岡村さんはともかく、
矢部さんに対しては、「なぜ、この人、芸人になろうと思ったんだろ?」と、
私は素人ながらに不思議で仕方なかった。普通の人にしか見えなかった。


矢部さんは、「めちゃイケ」など自分の番組内では、
ツッコミが上手く頼りがいのあるリーダー格に見えるし、そう映っているはずだ。
しかし、他の番組にゲスト出演した時は、
ツッコミもボケも何もできずに普通の人になっている。
「ツッコミ」や「司会」。そういったもの矢部さんから奪った場合、何も残らない。
芸もなければキャラもない。


そして、いつも笑い過ぎではあるが、
それはナイナイの笑いにメリハリをつける大切な要素であるという事は
言うまでもない。あのあたりはうまいと思う。


そして、岡村さんと違って、矢部さんにはキャラクターがない。
その事を本人もかなり悩んでいたらしいが、確かにそれはつらいハズ。
番組などで、いろいろな扮装をしたり全身タイツを着たりしていても、
全身タイツに着せられているという感じがして
なんか無理あるなぁ〜と、私などは思ってしまう。
「ぐるぐるナインティナイン」の「ゴチになります」の
リーゼントのヅラにしても、なんか、かぶらされてるなぁ〜と思ってしまう。
ただひとつハマった扮装は、めちゃイケ「近くへ行きたい」の出っ歯キャラである。


お笑いとは関係ないが、矢部さんは岡村さんを吉本に誘っておきつつ
同時に一人で、俳優の養成所にも願書を送っていたらしい。
なんせテレビに出たかったらしい。


ちなみに、「モーニング娘。」の「」を付けるきっかけとなったのは矢部さんらしい。



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●2006年08月16日初回更新日
●2008年1月19日追記・修正更新日