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【主張】診療報酬改定 開業医に甘すぎては困る
民主党政権で初となる来年度の診療報酬改定について中央社会保険医療協議会(中医協)が答申を行った。昨年末、10年ぶりに総額0・19%の引き上げが決まった。
民主党の政権公約に掲げた「入院診療の増額」を実現するために、引き上げ財源5700億円のうち4400億円を入院診療に配分した。
過酷な労働条件を嫌って病院を辞める医師は後を絶たない。地域の中核病院でさえ、閉鎖を余儀なくされる診療科がある。勤務医の労働条件や待遇の改善は待ったなしだ。病院に財源の多くを振り向けたことは評価したい。
患者側からの要望が強かった明細書付きの領収書発行についても、今回の改定に伴って医療機関に義務づけられることになった。中医協は「患者本位の医療を実現する」という根本部分を忘れてはならない。
病院600円、診療所(開業医)710円と差のあった再診料を690円に統一したことも前進だ。「同じ診察なのに差があるのはおかしい」との批判が強かったが、開業医中心の日本医師会(日医)の反対で見直しが進まなかった。この分野に切り込んだのは、政権交代の成果といえよう。
とはいえ、統一後の価格は診療側委員の強い抵抗で、診療所を20円下げただけの小幅に終わった。再診料引き下げは「開業医の優遇是正」を狙いとしていただけに、メリハリ不足は否めない。
それどころか、患者からの電話問い合わせに時間外で24時間対応する場合や、明細書の無料発行を行う診療所の再診料は加算する措置も設けた。これらが加算されれば、引き下げ分を取り戻すどころか、再診料は逆にアップする。
診療所は地域医療の支え手である。極端に収入が減って経営が行き詰まれば、困るのは患者だ。患者のために頑張る診療所の収入が増えるのは当然だろう。
だが、再診料の具体的な加算要件は定まっていない。「24時間対応できる」というのはあいまいだ。大半の診療所が算定できる可能性すらある。「結局は診療所の焼け太り」とならぬよう、厚生労働省は拡大解釈を許さない厳格な基準を示さなければならない。
長妻昭厚生労働相は日医の推薦委員を完全排除するなど政治主導を強調していたが、これでは「参院選を前に開業医に配慮した」との批判を招きかねない。