きょうのコラム「時鐘」 2010年2月14日

 別れが迫ると、名残が募る。寝台特急「北陸」と急行「能登」が来月で姿を消す。最後の指定席券がすぐに売り切れたそうである

列車と共に、この地を名乗る二つの愛称も消えてしまう。「サンダーバード」という片仮名では、旅情はさっぱりわいてはこない。「しらさぎ」は、どこにでもいる鳥。「はくたか」は立山の開山伝説に由来する命名だそうだが、ピンとくるのは地元の人だけだろう

「能登」は、肝心の半島の線路は走らない。が、能登への旅をいざなう急行でもあることに違いはない。愛着の染みた名である。新幹線「ひかり」に乗って、ほぼ各駅停車と知らされて驚いたことがある。最速列車の栄光と愛着とを、あっさりはぎ取られた愛称もある

去るものがあれば、来るものもある。北陸新幹線の愛称が、そろそろ気になってくる。路線や駅の誘致のように、愛称の「我田引鉄」もあるのだろうか。命名の苦労は、平成の大合併で知らされた。珍妙な市や町の名も生まれた

今思うと、あれは地域の文化や愛着の度合いの試験であった。ならば、北陸新幹線に愛称で恥をかかせるわけにはいかない。