ルポ:グアテマラの誘拐経験者が語る「恐怖の5日間」

 名前、性別、職業、年齢のいずれも明らかにできないというAさんは、インタビューを受けることを非常にためらった。もしかすると、インタビューの事実が知れ、誘拐犯が報復する恐れがあると考えたからだ。Aさんは数年前、グアテマラシティの路上で誘拐され、5日後に解放された。Aさんは「2台の自動車で突然前後をふさがれ、犯人4人が銃を突きつけてきた。体を引きずられながら、金を奪われることは覚悟したが、まさか誘拐されるとは夢にも思わなかった」と語った。

 Aさんが一命を取り留めたのは、落ち着いた対処のおかげだった。絶対に誘拐犯の顔を見ないようにしたという。Aさんは「誘拐から2日ほどたったころ、酒に酔った誘拐犯が“おれの顔を見ろ。頭巾を取ってもいい”と言った。しかし、顔を見たら殺されると思い、最後まで頭巾を取らなかった」と語った。Aさんは、そうして5日間を暗黒の中で過ごした。

 最終的に、誘拐から4日目、Aさんを殺すか殺さないかを決める話し合いが誘拐犯の間で行われたとき、「顔を見られていないから、金だけ取って殺さずにおこう」との決定が下された。

 スペイン語をネーティブスピーカー並みに駆使するAさんだったが、誘拐犯の前では何も分からないふりをした。Aさんは、「韓国語で家に電話をするができたため、状況を伝えやすかった」と語った。Aさんが電話をしている間、誘拐犯は恐怖感をあおるため、横で銃を撃ったこともあったという。

 監禁されていた場所は、グアテマラシティ市内から車で30分ほど離れたところだった。Aさんは、「誘拐犯と通りすがりの人が外で話す声が聞こえるほど、村全体が誘拐犯に協力していた。これが、脱出をあきらめた決定的な理由」と語った。

 Aさんは監禁されている間、警察から誘拐犯に交渉の情報が漏れていることを知ったという。

 Aさんは、「詳しいことは話せないが、わたしの家族が準備した身代金の額や韓国大使館が交渉に臨む姿勢まで、詳しく知ることができた。本当に、夢でも二度と経験したくない」と語った。

グアテマラシティ=趙儀俊(チョ・ウィジュン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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