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NECのUSB 3.0搭載ノート「LaVie L 870/WG」を試す



 NECのコンシューマ向けノートPCラインナップは、大きく3系統に集約される。ネットブックであるLaVie Light、CULVプラットフォームを採用した低価格モバイルノートPCであるLaVie M、そしてフルスペックのノートPCであるLaVie Lだ。実際には、それぞれの系統毎に、CPUやプラットフォームのバリエーションが用意されているため、もう少しラインナップは複雑(特にLaVie L)だが、以前に比べれば大分整理され、分かりやすくなった。

 ここで紹介するLaVie L 870/WG(LL870/WG)は、1月18日に発表されたLaVie Lシリーズ春モデルの最上位に位置づけられる、いわば全部入りモデル。Windows 7への切り替えを果たした2009年冬モデルのLL770/VGを継承する製品だ。価格はオープンとなっているが、本稿執筆時点での市場価格はおおよそ20万円といったところである。

【表1】LaVie L 870/WGの主な仕様
OS Windows 7 Home Premium(32bit)
CPU Core i5-430M(2.26GHz/2.53GHz)
チップセット HM55 Express
グラフィックス Intel HD Graphics(500MHz/766MHz)
メモリ 4GB PC3-8500
ディスプレイ 16型ワイド(1,920×1,080ドット)
HDD ST9500325AS
光学ドライブ BD-MLT UJ240AS
外部ディスプレイ端子 ミニD-Sub15ピン+HDMI
Webカメラ なし
拡張スロット ExpressCard/54
メモリカードスロット 3 in 1
LAN Gigabit Ethernet
WLAN IEEE 802.11a/b/g/n
Bluetooth/IEEE 1394 あり(v2.1)/あり
eSATA あり
Felicaポート あり
バッテリー ニッケル水素(約0.8時間駆動)
重量 約3.1kg(カタログ値)

 LL770/VGから継承したのは16型ワイドのフルHD(1,920×1,080ドット)液晶ディスプレイや、WirelessTV Digital、Blu-ray Discドライブの内蔵といったAV機能。WirelessTV Digitalは、無線LANのアクセスポイント(IEEE 802.11b/g/n)を兼ねた3波対応TVチューナモジュールで、無線LAN経由でのデジタル放送視聴を可能にする外付けユニットだ。

 LL870/WGには、このWirelessTV Digitalに対応した視聴ソフト(SmartVision)が工場出荷時に組み込まれており、ノートPC本体にアンテナ線を接続することなくデジタル放送を楽しむことができる。現時点でWirelessTV Digitalは単体での販売が行なわれていないから、この機能を利用したいユーザーは本機か、下位モデルのLL570/WGを購入するしかない。無線LAN経由のデジタルTV視聴は安定していたが、無線LANで十分な帯域がとれない場合に備えて、データを間引くモードも備えている。録画したデータの扱いはダビング10に対応しており、内蔵BDドライブを使って、BDへ書き出すことが可能だ。

 こうしたAV機能をより活かすため、本機では専用のビデオプロセッサ(専用チップ)を搭載している。LL770/VGで初めて採用されたこのチップにより、映し出される映像をリアルタイムに分析、部分毎に最適な色を再現することが可能になった。NECではこの機能を「彩りプラス」と呼んでおり、映像の種類に合わせて「ダイナミック」、「フォト」、「シネマ」、「スタンダード」の4つのモードを提供、SmartVisionやWindows Media Center、Windows Media Player、WinDVDといったバンドルソフトで、内蔵液晶ディスプレイへの表示モードの切り替えが可能となっている。

 LL870/WGの大きな特徴は、こうしたAV機能を継承しつつ、PCとしての基本性能を一新したことにある。プラットフォームは、Intel最新のCalpellaで、Core i5-430M(定格クロック2.26GHz)プロセッサを採用する。チップセットはHM55 Expressで、グラフィックスはプロセッサに内蔵のIntel HDグラフィックスだ。LL770/VGに比べると、プロセッサの定格クロックは若干下がっている(2.53GHzから2.26GHz)が、その分をTurboBoost(最大2.53GHz)と内蔵グラフィックスの性能向上分で補う、という格好だ。これで不満であれば、Core i7-620M(定格クロック2.66GHz)を選択可能な直販モデル、ということになるだろう。

 このほかに大きく変わったのは、内蔵するキーボードだ。LL870/WGでは、キーボードにテンキーパッドが追加された。デスクトップPC用のフルサイズキーボードと違って、数字キーのみ3列(横)のテンキーだが、数値入力を頻繁に行なうユーザーには重宝する。15〜16型クラスのノートPCのキーボードにテンキーを付与するのは最近の流行で、各社ともテンキー付きが当たり前になりつつある。

本機に添付されるWirelessTV Digitalは、別売されておらず、NEC製のノートPCとセットで購入する必要がある 3列のテンキーを備えたLL870/WG 角度によってボディの樹脂に埋め込まれたガラスフレークの反射が変わる

 こうした基本スペックに、ほぼ全部入りのインターフェイスを備えるのがLL870/WGの特徴だ。詳細は表を見てもらうとして、IEEE 1394やBlutooth、HDMI、さらにはeSATAまでほぼすべてのインターフェイス機能を持つ。足りないものと言えば、LL770/VGが内蔵していたWebカメラが本機で省略されてしまったことくらいだろうか。

 この充実のインターフェイスにさらに加わったのがUSB 3.0だ。今のところIntelのチップセットがサポートするのはUSB 2.0止まりであるため、本機では別途NECエレクトロニクス製のホストコントローラチップを搭載してUSB 3.0対応を実現している。LL870/WGには本体の左右と背面に計5つのUSBポートを持つが、うち左側面の2つがUSB 3.0対応となっている。このUSB 3.0ポートは、最大2.5Gbpsのデータ転送速度に対応、USB充電機能にも対応するが、おそらくBIOSの関係でリカバリには使えないなど、若干の制限がある。

●注目すべきUSB 3.0の実力は?
Windows 7のエクスペリエンスインデックス。最も低いのはグラフィックスとなっている

 さて、本機の性能だが、内蔵グラフィックスということで、3Dゲームをバリバリやれる、というところには及ばない。Windows エクスペリエンス インデックスでも、ボトルネックとなっているのはグラフィックス性能だ。ただ、この数字はおおむね2世代前のローエンド外付けグラフィックスチップに匹敵しており、3Dゲーム以外で困ることもないだろう。

【表2】ベンチマークテストの結果
PCMark05 v120
PCMark 5612
CPU 6579
Memory 5577
Graphics 2666
HDD 4980
PCMarkVantage(1,024×768ドット)
PCMark 4442
Memories 2992
TV and Movies 3650
Gaming 2993
Music 4675
Communications 3573
Productivity 2692
HDD 3293
3DMark 06 v110
3DMark Score 1716
CrystalMark 2004R3
Mark 101464
ALU 30739
FPU 30900
MEM 19388
HDD 8498
GDI 8195
D2D 1663
OGL 2081
FF Bench3
Low 3658
High 2417

 この全体性能とは別に、気になるのはわざわざ別チップを追加して実装しているUSB 3.0だ。USB 3.0でどの程度の性能が期待できるのか、USB 3.0に対応したストレージを接続してみることにした。用いたのは、USB 3.0に対応した、センチュリーの「裸族のお立ち台」と、Intelの80GB SSD(MLC/50nm)だ。これを本機のUSB 3.0ポートとUSB 2.0ポート、それぞれに接続して、違いをチェックしてみた。表2と同じベンチマークテストでHDD関連のものを、ターゲットをSSDに変えて実行したほか、単純なファイルコピーも行なっている。コピーしたのは1.03GBのMP4ファイルで、SSDを送り側と受け側の両方で所要時間を計測した。

カードリーダを含め、ユーザーが頻繁に使うインターフェイスの多くが、操作しやすい前面側にある 本機が搭載するUSB 3.0インターフェイスに裸族のお立ち台USB 3.0(USB 3.0 MassStorage USB Device)を接続したところ。
本体左側面、手前に用意されたUSB 3.0ポート(USBロゴにSSの文字が加えられたポート)とeSATAポート 右側面、BDドライブ奥のUSB 2.0ポートにはSSのロゴはない

 まずハッキリと言えることは、USB 2.0に対するUSB 3.0の効果が、すべてのテストにおいて顕著であった、ということだ。ベンチマークテストによる比較で2.5〜3倍の性能が得られたのはもちろん、ファイルコピーでも2倍から3倍近い性能差が見られる。SSDを送り側にした方が差が大きくなるのは、SSDというデバイスの特性(HDD比でライトよりリードがより速い)が現れたものだろう。SSDを外付けストレージとして利用する場合、USB 2.0ではバスがボトルネックとなってしまう。SSDの魅力は性能だけではないが、その真価を外付けで引き出したければ、USB 3.0やeSATAといった、高速な外部インターフェイスが必須と考えて良い。

【表3】USB 3.0関連のテスト(裸族のお立ち台USB 3.0にIntel SSD 80GBをセット)


USB 3.0 USB 2.0
PCMark05 v120 HDD 18523 6019
PCMarkVantage HDD 13639 4502
CrystalMark 2004R3 HDD 18392 6342
1.03GB(1,115,849,768bytes)のMP4ファイルのコピー


受け側


USB 3.0 SSD USB 2.0 SSD 内蔵HDD
送り側 USB 3.0 SSD N/A N/A 14.0秒
USB 2.0 SSD N/A N/A 38.3秒
内蔵HDD 22.1秒 47.4秒 N/A

 LaVie L 870/WGは、Calpellaプラットフォームをベースに、ワイヤレスTVや彩りプラスといったNECが培ってきたPC向けのAV技術を加え、さらに次世代インターフェイス技術として普及が見込まれるUSB 3.0を加えた、日本的なハイエンドノートPCだ。3Dグラフィックス機能はそれほど強力ではないが、わが国のゲーミングの中心がコンソール(ゲーム専用機)であることを考えれば、それほど不都合はないハズだ。搭載するOSはWindows 7 Home Premiumだが、今回のモデルからプリインストールの32bit版に加え、64bit版も選択可能(要リカバリ)になった。長く使えそうな1台と言えるだろう。