2009年08月20日 00時55分55秒
addictoの投稿
CJてんまつ報告(3)運命の仕事〈前編〉
テーマ:スター・ウォーズ
クリエイティブな仕事って言うのは不思議なもので、自分がやるべき仕事は、ガツガツしなくても、巡り巡って自然と自分に託されることになる。
ただし、長い時間がかかるけど。
とまあ、今回はそう言うお話。
ラルフ・マクォーリーと直接会ったのは、1997年のサンフランシスコでのSFコンベンションだった。
私は年末の『アクションフィギュア・アーカイブ』(ネコ・パブリッシング)の準備取材のために、夏中ずっと、西海岸にいた。
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この時は翻訳チェックを担当した、シネフェックス日本版の、SW旧三部作+〈特別篇〉(トイズプレス刊)の合冊を、知人のブースにおいてもらっていた。
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そしたらマクォーリーご一行が来て、その本に興味を示し、本を持参した私が「スター・ウォーズ・クロニクル」の著者だと告げると、ぜひとも会いたいと言ってくれたそうだ。
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1995年に竹書房から出した「SWクロニクル」は、この年までにはアメリカ版がサンフランシスコのクロニクルブックス社から出版され、
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この大会でも大切そうにかかえたファンが、C-3POのページを開いて、ゲストのアンソニー・ダニエルズにサインをもらったりしていた。
ちなみに、海外版が出版されるなんて話は一切知らされず、私は自腹を切ってクロニクルブックスの英語版クロニクル(ややこしい)を買い求めた。
なので、今さっきクロニクルにサインをもらった青年に、「それ、ボクが作った本です」と言うとタイヘンに驚かれたが、同時に「名前はどこに載ってるの?」と訊かれて、とても恥ずかしい思いをした。
編プロの名前が著者になっていて、私の名前の表記なんかなかったからだ。
同じ1997年には、〈特別篇〉の要素を巻末に足した3分冊版がメディアワークスから発売されたが、これまた何も知らされずに、いつの間にか書店に並んでいて驚いた。
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まあとにかく、ショーもお開きが近づいて、いよいよマクォーリーとご対面になった。
ピンクのシャツを着たマクォーリーは、とても気さくな人で、SWクロニクルのことを、「これまでのSW関連書籍で、一番わかっている人が書いた本(=モースト・コンプリヘンシヴ)」と誉めてくれた。
で、たまたまアメリカ版がそこにあったので、かねてからの質問をしてみた。
「これ(左側のレオタード)って、レイアなんですか、ルークなんですか?」
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というのも、いかにもお姫様のドレスの衣装案ばかりのレイアなのに、これだけが活動的なコスチュームだったからだ。
それにルークは一時、女性にする案だってあった。
↓初期設定段階では、ルーカスみたいなあごひげで、ライトセーバーを手にしている男性がハン・ソロで、かたわらで低い姿勢の女性がルーク(の役割)だった。
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マクォーリーは、
「ああ、いい質問だね。ルーカスは一時期、ルークとレイアの役割をごっちゃにしたり、入れ替えた時期があったからね。これはその頃のデザインだから」
ということだった。
ルークとレイアが双子って言う設定は、案外ここらへんから来てるのかもよ。
今にして思えば、この特定のイラストについては、もっと別の質問をするべきだったかも知れないが、話が逸れるのを覚悟で、ちょっとそっちの話。
私は二度だけ、松本零士先生の自宅に行って、インタビューをしたことがある。
その時に先生は、「キャプテンハーロックの企画書が行き着いて、SWのデザインに流用された。デザインだけでとどまって、映画本編には使われなかったけれど」とおっしゃっていた。
その後、色々調査した最終結果だけ記しておくと、そのハーロックのデザイン画というのは、小松原一男氏が描いた、有紀蛍(ゆうき・けい)のこの設定画のことで、
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二つの設定画を並べれば、なるほど、有紀蛍のいかにもアニメやマンガ風の絵(左)を、リアルな女性のプロポーションにマクォーリーが描き直したのが、右の絵だとわかる。
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本当はななめがけのガンベルトは、『宇宙戦艦ヤマト』の森雪か、もしくはタイトルキャラのハーロックが参考になっているかも知れないが、話を簡単にするため、それについては割愛。
だけど、テレビ「宇宙海賊キャプテンハーロック」の放映は、SW1作目が公開される3ヶ月前の、1978年の3/14から。
1977年5月にアメリカで公開されたSWの準備段階は、1975年とか1976年なので、その時点でマクォーリーがアニメ設定を目にすることなんて、できたんだろうか。
反対に、SWの人気を知って、マクォーリーのデザインをアニメ「ハーロック」がパクッたことは、考えられないのだろうか。
マクォーリーのレオタード風、ボディラインを際だたせて独特のポーズを取らせたイラストというのは、当時の他のキャラには該当、類似するものがない。
またルーカスは、各キャラの参考に様々な雑誌の切り抜きや写真をマクォーリーに渡しているので、真相は有紀蛍のイラストの方こそが、マクォーリーの参考にされた可能性の方がうんと高い。
では1975年や1976年に、すでにこの有紀蛍のイラストが存在していたのか……だが、まずは1975年、つまり「宇宙戦艦ヤマト」製作終了直後には、零時社による「キャプテンハーロック」のテレビアニメ企画書が完成していて、アルカディア号、マゾーン艦、敵の首領ラフレシアのデザインは、すでに決定稿と同じものができあがっていた。
で、ルーカスはこの企画書を手に入れていた可能性が高い。
ただし有紀蛍は、まだ上の小松原氏のイラストではなく、松本氏自身が描いた、立ち膝ポーズの以下の絵(左)で、それを参考にしたと思しき、マクォーリーの絵が、右である。
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↑松本デザインが立ちポーズで描いていないことに影響されて、マクォーリーのデザイン画が、上半身のみで未完成なことにも注目。
この時点(ハーロック第一企画書の75年)では、「ヤマト」はあっても、『SW』は影も形もなかったから、ハーロックがSWの人気にあやかろうと、デザインをパクるなんてことはありえない。
またこの企画書をルーカスがどういうわけか持っていたことから察するに、テレビ放映1年前の1977年から、秋田書店の青年誌プレイコミックで「ハーロック」が連載された頃には、すでに78年テレビ版の企画書もとっくに出来上がっていたから(なかなか買い手が見つからず、雑誌連載が先行した)、この日本のアニメ企画をしつこく追跡していたルーカスが、最初の企画書を入手したルートで、こちら(本番用の第2の企画書)も手にしていたと思われる。
と言うより、そう考えないと、つじつまが合わない。
さてさて、松本零士先生は、「このデザイン(有紀蛍)は、デザイン段階でボツになり、映画には出てこなかった」と思っているが、どっこい1作目にしっかり出ている。
カンティーナ(酒場)のシーン用のジョン・モロ(コスチュームデザイナー)のスケッチは、いつもの彼らしく、よくいえば簡潔、悪く言えば投げやりだ。手脚はまるで棒のように、テキトーに描かれている。]
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ところがそんな中で、頭髪こそモヒカンだけど、妙になまめかしい曲線で描かれた、女性のデザインがあった。
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あれっ?
これ(左)って、これ(右)じゃん!
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このキャラはリストではスペースガールズとなっていて、二人の配役も記録されている。
というわけで、現在トニカ・シスターズとして知られる女性二人組(実際には双子でもないし、身長も衣装の色も違う)に、デザインが生き残ることになりましたとさ。
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↑ガンホルスターがなくなったのに、太ももには名残のバンドが……。
というわけで、全くCJに話が行き着かなかったが、そのうちちゃんとつながりますので、今回はこのへんで~。
よろしかったら、人気ブログランキングの1日1ポチ、お願いします。
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ただし、長い時間がかかるけど。
とまあ、今回はそう言うお話。
ラルフ・マクォーリーと直接会ったのは、1997年のサンフランシスコでのSFコンベンションだった。
私は年末の『アクションフィギュア・アーカイブ』(ネコ・パブリッシング)の準備取材のために、夏中ずっと、西海岸にいた。
この時は翻訳チェックを担当した、シネフェックス日本版の、SW旧三部作+〈特別篇〉(トイズプレス刊)の合冊を、知人のブースにおいてもらっていた。
そしたらマクォーリーご一行が来て、その本に興味を示し、本を持参した私が「スター・ウォーズ・クロニクル」の著者だと告げると、ぜひとも会いたいと言ってくれたそうだ。
1995年に竹書房から出した「SWクロニクル」は、この年までにはアメリカ版がサンフランシスコのクロニクルブックス社から出版され、
この大会でも大切そうにかかえたファンが、C-3POのページを開いて、ゲストのアンソニー・ダニエルズにサインをもらったりしていた。
ちなみに、海外版が出版されるなんて話は一切知らされず、私は自腹を切ってクロニクルブックスの英語版クロニクル(ややこしい)を買い求めた。
なので、今さっきクロニクルにサインをもらった青年に、「それ、ボクが作った本です」と言うとタイヘンに驚かれたが、同時に「名前はどこに載ってるの?」と訊かれて、とても恥ずかしい思いをした。
編プロの名前が著者になっていて、私の名前の表記なんかなかったからだ。
同じ1997年には、〈特別篇〉の要素を巻末に足した3分冊版がメディアワークスから発売されたが、これまた何も知らされずに、いつの間にか書店に並んでいて驚いた。
まあとにかく、ショーもお開きが近づいて、いよいよマクォーリーとご対面になった。
ピンクのシャツを着たマクォーリーは、とても気さくな人で、SWクロニクルのことを、「これまでのSW関連書籍で、一番わかっている人が書いた本(=モースト・コンプリヘンシヴ)」と誉めてくれた。
で、たまたまアメリカ版がそこにあったので、かねてからの質問をしてみた。
「これ(左側のレオタード)って、レイアなんですか、ルークなんですか?」
というのも、いかにもお姫様のドレスの衣装案ばかりのレイアなのに、これだけが活動的なコスチュームだったからだ。
それにルークは一時、女性にする案だってあった。
↓初期設定段階では、ルーカスみたいなあごひげで、ライトセーバーを手にしている男性がハン・ソロで、かたわらで低い姿勢の女性がルーク(の役割)だった。
マクォーリーは、
「ああ、いい質問だね。ルーカスは一時期、ルークとレイアの役割をごっちゃにしたり、入れ替えた時期があったからね。これはその頃のデザインだから」
ということだった。
ルークとレイアが双子って言う設定は、案外ここらへんから来てるのかもよ。
今にして思えば、この特定のイラストについては、もっと別の質問をするべきだったかも知れないが、話が逸れるのを覚悟で、ちょっとそっちの話。
私は二度だけ、松本零士先生の自宅に行って、インタビューをしたことがある。
その時に先生は、「キャプテンハーロックの企画書が行き着いて、SWのデザインに流用された。デザインだけでとどまって、映画本編には使われなかったけれど」とおっしゃっていた。
その後、色々調査した最終結果だけ記しておくと、そのハーロックのデザイン画というのは、小松原一男氏が描いた、有紀蛍(ゆうき・けい)のこの設定画のことで、
二つの設定画を並べれば、なるほど、有紀蛍のいかにもアニメやマンガ風の絵(左)を、リアルな女性のプロポーションにマクォーリーが描き直したのが、右の絵だとわかる。
本当はななめがけのガンベルトは、『宇宙戦艦ヤマト』の森雪か、もしくはタイトルキャラのハーロックが参考になっているかも知れないが、話を簡単にするため、それについては割愛。
だけど、テレビ「宇宙海賊キャプテンハーロック」の放映は、SW1作目が公開される3ヶ月前の、1978年の3/14から。
1977年5月にアメリカで公開されたSWの準備段階は、1975年とか1976年なので、その時点でマクォーリーがアニメ設定を目にすることなんて、できたんだろうか。
反対に、SWの人気を知って、マクォーリーのデザインをアニメ「ハーロック」がパクッたことは、考えられないのだろうか。
マクォーリーのレオタード風、ボディラインを際だたせて独特のポーズを取らせたイラストというのは、当時の他のキャラには該当、類似するものがない。
またルーカスは、各キャラの参考に様々な雑誌の切り抜きや写真をマクォーリーに渡しているので、真相は有紀蛍のイラストの方こそが、マクォーリーの参考にされた可能性の方がうんと高い。
では1975年や1976年に、すでにこの有紀蛍のイラストが存在していたのか……だが、まずは1975年、つまり「宇宙戦艦ヤマト」製作終了直後には、零時社による「キャプテンハーロック」のテレビアニメ企画書が完成していて、アルカディア号、マゾーン艦、敵の首領ラフレシアのデザインは、すでに決定稿と同じものができあがっていた。
で、ルーカスはこの企画書を手に入れていた可能性が高い。
ただし有紀蛍は、まだ上の小松原氏のイラストではなく、松本氏自身が描いた、立ち膝ポーズの以下の絵(左)で、それを参考にしたと思しき、マクォーリーの絵が、右である。
↑松本デザインが立ちポーズで描いていないことに影響されて、マクォーリーのデザイン画が、上半身のみで未完成なことにも注目。
この時点(ハーロック第一企画書の75年)では、「ヤマト」はあっても、『SW』は影も形もなかったから、ハーロックがSWの人気にあやかろうと、デザインをパクるなんてことはありえない。
またこの企画書をルーカスがどういうわけか持っていたことから察するに、テレビ放映1年前の1977年から、秋田書店の青年誌プレイコミックで「ハーロック」が連載された頃には、すでに78年テレビ版の企画書もとっくに出来上がっていたから(なかなか買い手が見つからず、雑誌連載が先行した)、この日本のアニメ企画をしつこく追跡していたルーカスが、最初の企画書を入手したルートで、こちら(本番用の第2の企画書)も手にしていたと思われる。
と言うより、そう考えないと、つじつまが合わない。
さてさて、松本零士先生は、「このデザイン(有紀蛍)は、デザイン段階でボツになり、映画には出てこなかった」と思っているが、どっこい1作目にしっかり出ている。
カンティーナ(酒場)のシーン用のジョン・モロ(コスチュームデザイナー)のスケッチは、いつもの彼らしく、よくいえば簡潔、悪く言えば投げやりだ。手脚はまるで棒のように、テキトーに描かれている。]
ところがそんな中で、頭髪こそモヒカンだけど、妙になまめかしい曲線で描かれた、女性のデザインがあった。
あれっ?
これ(左)って、これ(右)じゃん!
このキャラはリストではスペースガールズとなっていて、二人の配役も記録されている。
というわけで、現在トニカ・シスターズとして知られる女性二人組(実際には双子でもないし、身長も衣装の色も違う)に、デザインが生き残ることになりましたとさ。
↑ガンホルスターがなくなったのに、太ももには名残のバンドが……。
というわけで、全くCJに話が行き着かなかったが、そのうちちゃんとつながりますので、今回はこのへんで~。
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1 ■著書
「アクションフィギュア・アーカイブ」
「クロニクル」
・・・とても懐かしい。
入手した時は貪る様に読んだ記憶があります。
機会があればサインをお願い致します(笑)