きょうのコラム「時鐘」 2010年2月13日

 「暗合(あんごう)」という言葉がある。無関係なのに偶然とは思えないほどよく似ていることをいう。バンクーバー冬季五輪のエンブレム(紋章)が兼六園の徽軫(ことじ)灯籠と似ているなどがその例である

カナダのイヌイットが道標とした石像がエンブレムの原型であり、漢字の「京」にも似ている。カナダの先住民が漢字を知っているわけがないが、目印に石を積めば世界中どこでも似た形になるのだろう

遠く離れた文化が影響する例はよくある。エジプトと中南米にあるピラミッドはまったく独立したものか、見えない糸でつながっていたのか。常識的には無縁だが、カナダの石像と日本の灯籠もどんな縁があるか分からない。無理なこじつけと歴史のロマンは紙一重である

雪と氷の自然に暮らす中からスキーやスケートを考えた民族がいる。怖いジャンプを考え出した国もある。方法や道具はまるで違うが、発想はどこもよく似ている。色の異なる五つの輪の組み合わせを見ながら考える。国家や民族の違いと雪国に住む者同士の共通性を

人間が等しく持っている知恵や勇気を、さらには歴史の「暗合」の深さを。