ナイジェリアの緑と住民の暮らしをむしばむ「黒い涙」の脅威を取材しました。
アフリカ随一の産油国・ナイジェリアで進む環境破壊、緑と住民の暮らしをむしばむ「黒い涙」の脅威を取材しました。
アフリカ・ナイジェリアでは、日常的にガソリンスタンドに車が列をなしている。
車に乗る男性は「もう嫌だよ...。(どうして?)毎日ガソリンを買うのに3~4時間待つんだ」と話した。
アフリカを代表する産油国でありながら、石油にまつわるトラブルは尽きない。
発展を続ける西アフリカの地域大国、ナイジェリア。
ナイジェリアは実に50年以上にわたり、南東部の「ニジェール・デルタ」と呼ばれる油田地帯から産出される原油の輸出に支えられている。
しかし、およそ17年間放置された油井の跡では、機械が残っており、まだ地中からガスが噴き上がってる。
油井跡の地面は、すべて石油まみれになってる。
今なお、地中からガスが噴き、原油が漏れ出す油井。
周囲の土地は一面、原油で黒くなり、取材時にはその漏れ出した原油が、自然に発火し始めていた。
地元住民のモーガン・ノルティさんは「この辺りは、どこに行っても原油が漏れ出ています。作物は何も育ちません。まったくです」と話した。
地元の養魚場で働いているというモーガンさんによれば、この油井は欧米系石油企業が放棄したものだという。
モーガンさんは「(石油会社は)住民のためには、特に何もしてくれない状況でした。教育もない、医療機関もない、道路もないのに改善してくれないのです」と話した。
54年前、ニジェール・デルタで油田が掘り当てられると、緑豊かだった土地は一変した。
石油関連施設が立ち並ぶと、今度は産油設備の事故が頻発するようになった。
パイプラインの炎上事故などは、1970年代半ばから25年間で、6,800回以上数えている。
2日に1回以上の割合で、事故が起こっていたことになる。
特にパイプラインなどからの原油流出は、農地などの土壌汚染にとどまらず、飲料水にもなる川の水質汚染も引き起こした。
こうした事態に、住民らは権利と自治、環境保護などを求め運動を起こし、1993年には欧米系企業を一部操業停止にまで追い込んだ。
今残されているこうした油井は、この時の住民運動の結果、石油企業が操業を停止・放棄していったもの。
だが、放棄の際の処置に問題があったためか、操業停止後の油井の数々では、原油漏れが起こり、ほかの場所でも、それは続いているという。
さらに、土地の下にある石油のパイプラインから染み出した石油が、畑の中に染み出しているという。
住民のモーガンさんによれば、こうした土地や水質の汚染は、処理されることもなく、漁業や農業にも、依然、悪影響が続いているという。
モーガンさんは「わたしたちの生活は変わってしまいました。生き残るために、他人の奴隷になりました」と話した。
9割の住民が失業中だという油田地帯。
ナイジェリアにばく大な富をもたらす石油資源だが、この地域に住む人々にとって、それは大地に染み込む「黒い涙」にすぎないのかもしれない。
(02/13 00:51)