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【産経抄】2月12日
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記憶だけだから細部まで正確かどうかわからない。昔、小学校の教科書に載っていた話のことである。早口言葉を覚えた男の子が、父親にそれを自慢する。だが父親は「それよりもっと難しい言葉がある。それはハイとイイエだよ」と教える。
▼子供は「そんなの簡単だよ」と反発するが、その後、禁じられていた危ない遊びをやってしまう。父親から「ホントにやったのか」と問いつめられて、ハイともイイエとも答えられない。父親は「やっぱり一番難しい言葉だろう」と諭す。たしかそんな訓話だった。
▼鳩山由紀夫首相は政治資金規正法違反事件で不起訴になった民主党の小沢一郎幹事長に「続けてよろしいか」と言われ、「ハイ」と答えたという。まことに明快な続投容認に聞こえるが、そう簡単には受け取れない。本当は「イイエ」と言いたかったのではと思えるからだ。
▼首相自身、小沢氏の「責任」を認めている。世論は圧倒的に「幹事長辞任」である。内閣支持率にとってもその方がいいに決まっている。国民の側に立つなら「イイエ、もう辞めてください」と言うべき言葉が出てこない。それが与党の代表と幹事長との力関係らしい。
▼首相だけではなく、民主党議員みんなが「続けていいか」とすごまれ「イイエ」と言えず立ちすくんでいるように見える。一方で起訴された石川知裕議員は、自らの判断で議員辞職ではなく離党を決めたという。だがその弱い立場を考えるとにわかに信じられない。
▼永住外国人への参政権問題や沖縄の米軍基地問題もそうだ。民主党議員にはさまざまな意見や賛否があるはずだ。だが誰もその意思表示をしない。与党の人々が「イエス」や「ノー」も言えないようではこの国の民主主義は危うい。