A型肝炎:患者数増加の背景に「衛生のパラドックス」

手洗い習慣が身に付いている若年層

子供のころ感染せず海外旅行で感染

発症率は2007年の7倍

10日午後、ソウル市江南区のサムスン・ソウル病院で、A型肝炎の予防接種を受ける女性。病院関係者は、「昨年6月ごろからA型肝炎の予防接種に関する問い合わせが増えている。今年はさらに増えるだろう」と話している。/写真=イ・ジュンホン客員記者
 A型肝炎が急速に流行する兆しを見せている。疾病管理本部が全国の地域病院約1030カ所による報告を分析したところ、昨年1年間に計1万5041人がA型肝炎で診療を受けたことが分かった。これは2007年(2233人)の7倍、08年(7895人)の2倍近い数字だ。今回の調査対象になっていない病院まで含めれば、実際の発症件数は少なくとも3万人を上回ると疾病管理本部は推測している。

 サムスン・ソウル病院消化器内科のペク・スンウン教授(53)は、「A型肝炎は通常、3月から4月にかけて流行する。昨年は3月以降に感染者が発生し始めたが、今年は冬でも救急外来を訪れる感染者が多く、春には昨年よりもかなり増えるとみられる」と語った。

 A型肝炎が猛威を振るっている背景には、「衛生のパラドックス(逆説)」がある。A型肝炎は衛生状態が良好なほどかかりにくい水因性の伝染病だ。子供の時に感染し、軽い症状で済めば、一生かからない。開発途上国では人口のほとんどが5歳前に感染する。韓国でも40代以上はほとんどが抗体を持っている。

 問題は20-30代だ。生活が豊かになり、衛生水準が高まったため、その世代の10人に9人は子供のころにA型肝炎に感染せず、大人になってから海外旅行などで感染するケースが多い。事実、疾病管理本部に昨年報告されたA型肝炎患者の82%が20-39歳だった。

 疾病管理本部の依頼でA型肝炎の実態調査を行った乙支大学医学部のキ・モラン教授(44)は、「25-34歳の韓国人男性のA型肝炎発症率は10万人に200人、同年齢の女性は10万人に160人で、90年代末の米国がA型肝炎を小児の予防接種として義務化した時の数値を数倍も上回る深刻な状況」と話す。米国のA型肝炎発症率は当時、10万人に20人程度だった。

 1度の感染で慢性化するB型・C型肝炎とは違い、A型肝炎は1度かかれば2度とかかることはない。子供の時にかかれば症状は軽いが、大人が発症すれば短期間に病状が悪化し、ひどい場合は劇症肝炎になる。

 A型肝炎は1年おきに2度の予防注射を受ければ一生かかることはない。しかし、保険が適用されないため、1回の接種費用は4-8万ウォン(約3100-6200円)かかる。ワクチン輸入業者は「例年通りの価格で供給している」と言うが、接種費用は定められておらず、一部の病院でこれより高く請求しても、政府は打つ手がない。本紙が確認したところ、昨年までは接種費用が4万ウォンだった病院でも、今年は6-8万ウォン(約4700-6200円)というところが多かった。

金秀恵(キム・スへ)記者

金慶和(キム・ギョンファ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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