(cache) 足利事件最終弁論要旨 - 47NEWS(よんななニュース)
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  • 足利事件最終弁論要旨 

     足利事件の再審第6回公判で12日、行われた最終弁論要旨は次の通り。

     ▽DNA鑑定

     足利事件はこれまでの冤罪事件と異なり、菅家利和さんの自白は虚偽で、無実であるのは明白。理由は松田真実ちゃんの下着に残された犯人の体液と菅家さんのDNAが一致しなかったからだ。

     検察は「警察庁科学警察研究所(科警研)の鑑定は当時の鑑定としては誤りでない」と主張している。だが当時の鑑定は異なるものを同一と判定する可能性がある危険なものだった。また科警研の福島弘文所長も、正しい型判定ができないことを認めていた。

     福島所長は「鑑定は参考程度で出すべきだった」と証言。下着に真実ちゃんや母のDNAが付着していることを見落としたことも深刻な問題だ。

     本件鑑定は刑事裁判の証拠として使用できる水準に達せず、証拠能力を否定すべきものだ。

     ▽自白

     菅家さんの自白は、公判での自白も含め虚偽であり任意性はない。

     警察での取り調べは、任意とは名ばかりで強制捜査そのものだった。根本的に誤ったDNA鑑定を「決め手」であるかのように装った極めて違法な取り調べだ。

     森川大司検事(当時)の取り調べも、DNA鑑定の証拠価値を誤って菅家さんに伝え、錯誤に陥れて自白させたものだ。

     本件では、菅家さんが威圧的な取り調べの影響を受けたまま公判に臨んでいただけでなく、公判の合間の森川検事による起訴後の取り調べの強い影響下にあったことが取り調べの録音テープによって明らかになった。

     録音テープによると1992年12月7日、菅家さんは別の女児の2事件だけでなく本件も全面的に否認した。だが森川検事は翌8日の調べで、DNA鑑定を突きつけるなどして再び自白させた。

     菅家さんは強いマインドコントロール状態に置かれ、公判で自白を維持せざるを得ない状況だった。録音テープで、公判の自白にも証拠能力がないことが明白となった。足利事件の録音テープは裁判員裁判の時代を迎えた今、すべての国民が聞くべき共有財産だ。

     ▽おわりに

     菅家さんを有罪にした二つの証拠、「科警研のDNA鑑定」と「菅家さんの自白」には、いずれも証拠能力がなく刑事裁判の証拠として採用されるべきものではなかった。足利事件の有罪判決が破棄されなければならない理由は、検察官が主張するように、DNA再鑑定によって菅家さんの無実が明らかになったというのではなく、もともと菅家さんを有罪にする証拠はなかったというものでなくてはならない。

     それは、足利事件に下されたすべての裁判が誤りだったことを、裁判所が認めることを意味する。それは司法にとって恥ずべきことのように思える。しかし、裁判所による過去の過ちを率直に認める判断こそが司法に対する国民の信頼をつなぎ留める唯一の道だと信じて疑わない。

     足利事件の悲劇は特定の誰かによってではなく、事件に関与したすべての者がそれぞれ、なすべきことをなさず、なすべきでないことをなしたために生み出された。特定の誰かを非難するのは、問題の所在を誤らせるものだ。マスコミによる誤った報道を含め、それぞれがその職責を果たさなかったために、悲劇が生まれたのではないかという深刻な反省を求められているのが足利事件だ。

     最後にあえて言えば、菅家さんには自分を守る力がなかった。しかしどんなに弱くても無実の人を犯人に仕立ててはいけない。裁判所の無罪判決が足利事件の誤判の原因をえぐり出し、わが国の刑事司法の未来に光を投げ掛けることを望む。

      【共同通信】