【コラム】「朝鮮の豚」扱いされた同胞たち(下)

 韓国の作家らは、人間扱いされずに豚と呼ばれる彼女たちと会い、苦痛の証言を記録し始めた。黄晳暎(ファン・ソギョン)さんの長編小説『パリデギ』(07年)は、食べ物を求めて中国東北部をさまよい、英国までたどり着く脱北者の少女の足取りを追った作品だ。パク・チャンスンさんの小説集『渤海風の庭園』(10年)に収録された短編『地質時代を泳ぐ魚』には、市場を活性化すべきと主張して粛清された北朝鮮貿易省幹部の娘が登場する。娘は一家の没落を経験し北朝鮮を脱出。中国吉林省の延吉にある冷めん店で2年以上も下働きした末、韓国に定住する。李大煥(イ・デファン)さんの長編『大金とコンドーム』(08年)は、中国東北部経由で韓国にやって来た脱北者の女性が、北朝鮮に置いてきた家族に生活費を送るために孤軍奮闘するさまを描いている。

 北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記は、人民に白い飯と肉入りスープを食べさせられないことを残念がったという。北朝鮮の同胞はそれを聞いてどう思っただろうか。1990年代に餓死した家族、親族のことを思い出しただろうか。国民を飢えさせてまで作った核爆弾を思い浮かべただろうか。金総書記の言葉は、爆発寸前の世論をなだめるために流した「偽りの涙」にすぎないという印象はぬぐえない。自国では暮らしていけず、国境の外をさまよい、「朝鮮の豚」呼ばわりされる流浪の民には同情の言葉もない。南北首脳会談が行われるならば、李明博(イ・ミョンバク)大統領には、「朝鮮の豚」のつらいストーリーがつづられた韓国の作家の小説を金総書記に手渡してもらいたい。

金泰勲(キム・テフン)文化部次長待遇

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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