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2010年2月12日(金)

大手民放ラジオ13社、ネット同時放送解禁へ

3月から変わるラジオ局 NHKは地方はどう動く?

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 一方で、「Twitter(ツイッター)」などのソーシャルメディアでは、テレビやラジオの話題で盛り上がることが多く、ネットと放送の相性が良いことが分かってきた。

 特に若年層は、ネットに接触する時間が年々伸びており、欧米ではネットでの同時送信を機に、ラジオ局の聴取者が反転して増えているという調査結果もある。

 同時送信が可能になれば、放送しているサイトへのリンクを張ってツイッターなどからユーザーを誘導することも可能だ。また、通販サイトや、楽曲の販売サイトなどへリンクを張り、放送中の商品や楽曲の購入を促すといった、新たなビジネスモデルも模索できる。

 家庭や職場などからは、ラジオチューナーが消えつつあり、物理的に不利な状況となっていた。が、コンテンツの質が大きく落ちているわけではない。「出るところへ出れば、それなりの需要と収益を見込める」との思惑が、徐々に業界内に浸透した。

大手民放を取りまとめた陰の功労者

 大手各社がネット放送に保守的だった理由として、「電波利権」をどう守っていくかという問題との兼ね合いもあったようだ。

 だが今回、「都市部の難聴取を解消するための実証実験」という大義名分を前面に押し出しながら、ネット時代の新たな聴取者獲得への橋頭堡を築くという道を歩むことで、各局は一致した。

 民放各社の合意が進んだ背景には、各局を取り持つ形で協議会の事務局を買って出た電通の存在もある。

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 広告を取り次ぐ電通は、ラジオの媒体力低下とともに沈むのではなく、ラジオ局に聴取者を拡大してもらい、再び広告媒体としての価値を高めてもらう方向へと業界を誘いたかった。

 ラジオ広告費は91年の約2400億円をピークに、2008年の約1550億円まで減少している。今年に入っても広告量は前年割れが続いており、電通としても、最も痛んでいるマスメディアの再興は急務だった。

コミュニティFMは4年前から同時送信を実現

 同時送信が実現しない理由として、音楽著作権者や出演者、広告主との交渉が困難である、という「建前」もあった。

 だが、経営基盤が弱いコミュニティFM各局は既に、2006年から徒党を組んでJASRACと交渉、音楽も含めたネット同時送信を実現させている。この点について、前出とは別の関係者は「要は大手各社の足並みが揃わず、前向きにもならなかっただけ」と斬る。

 ところが電通が音頭をとり、足並みは一気に揃った。そうなると、権利団体も軟化せざるを得ない。音楽関連だけでなく、CMの権利を持つ日本広告業協会や大手芸能事務所などとも、スムーズに合意が取れたようだ。

 業界が一丸となり、「ラジオ復権」に向けて動き出した民放各社。ただし、前途洋々というわけにはいかない。多くの解決すべき課題が、取り残されている。







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 大メディアに吹き荒れる経営危機の嵐。その要因は、ネットや携帯電話の普及によって、広告ビジネスのルールもプレイヤーも定義も何もかもが変わってしまった、ということに尽きる。
 グーグルの成功は、新しい時代の正解の1つに過ぎない。広告ビジネスを取り巻く状況は日々目まぐるしく変化している。カオスのメディア、カオスの広告――。その奔流の最前線を追う。

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